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『バカの壁』

2003年12月23日
バカの壁
著者養老孟司
出版社新潮新書

爺さまが書いた(正確には「書いてもらった」だが)本としては,上出来だと思います。ここでいう爺さまというのは,年齢的なものではなく精神的なものです。上から批評されることがなくなって,知名度も高くなった人の多くは,爺さまになります。爺さまが書いた本というのは,大抵身内で処分するもんだけれど,流行語大賞をとるまでに売れてしまうというのは,流石に知名度のなせる業です。

さて,同氏の基本的なスタンスは,『唯脳論』からも読みとれるとおり,「身体」を見直すことを通じて現実世界を実質化していくことが大切だ,という主張です。本書では,さらにそれを前提として,様々な社会問題を批評するという構成になっています。扱う分野は多岐に渡っていて,教育問題から経済問題,さらにはオウム事件からウサマ・ビンラディンまで出てきます。

ただ,この手の社会批評は,多くが「戯言」に終始しがちで,実際本書も例外ではありませんでした。問題を広く扱ってしまうために,筆者の教養というか,全体的なバランス感覚が試されてしまうのです。

本書を例にとると,一般にいわゆる「個性を伸ばす教育」は,決して筆者曰く「精神病患者」を作ることを意味していないし,経済成長と環境破壊は必ずしも対置される概念ではないはずです。一般に使われている「言葉」に対してドグマスティックな解釈を加えてしまうところに,「戯言」っぷりが見えてしまいました。

大学で法学を専攻していた私としては,「犯罪抑止のために被告人(ひいては国民)に脳味噌検査を受けさせる」なんて言説や(今更ロンブローゾを持ち出す気なんでしょうか),「検察官は心神耗弱の判断を避けるために精神鑑定を嫌う」などと言い切る言説(論外)は,それこそトンデモです。

『唯脳論』を敷衍し切れていない内容にガッカリしてしまいました。

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