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『現代思想の遭難者たち』

2004年11月05日

現代思想の遭難者たち』(いしいひさいち,講談社,2002)

『現代思想の遭難者たち』

えー……久しぶりに本の紹介です。漫画ですけど……。

本書は,とかく難しいとされている現代思想を,「ののちゃん」(朝日新聞連載中)でおなじみのいしいひさいちがパロディ漫画にしたものです。元々は,『現代思想の冒険者たち』シリーズ(講談社)の解説冊子に掲載されていた作品で,それを書籍にまとめたものになっています。

感想はというと,「8号館ネタ」の哲学科版といった感じ……。ネットリとした生温かいネタで,なかなか心地よかったです。

「8号館ネタ」というのは,あたしが学生の頃,法学系サークルの仲間内にあった言葉で,「法学部の仲間内でしか通用しないネタ」という意味です。法学部が8号館に入っていたので,法律の勉強を始めて間もない学生が,覚え立ての法律用語を使ってひねり出したネタを,そう呼んでいたんです。

今となっては,書くのも恥ずかしいしょーもないネタなんですけれど,こういうネタは,どこの学部にもあるんじゃないでしょうか。哲学科の学生さんは,本書のようなネタを肴に酒を飲んでいるのかなぁ……なんて想像してしまいます。

『現代思想の冒険者たち』シリーズは,思想家ごとに思想の概略を解説したものです。概略だから,本格的に専攻している人は,こんな又聞き本を元本にするもんじゃありませんけど,一般教養で「バタイユ論」をとっていたあたしにとっては十分で,大いに重宝しました。

一方,『現代思想の遭難者たち』の方は,『冒険者たち』をパロディにしたものです。そんなわけで,少なくとも,『冒険者たち』に書かれている内容くらいは踏まえてないと,笑えないかもしれません。逆に,踏まえていれば笑えるのかというと……それも人によるような……。

あたしが踏まえていたのはバタイユの他に,なぜか高校生の時に読んでいたニーチェ・フロイド・ユング,受験中に読んでいた構造主義・ポスト構造主義の諸衆,大学の一般教養で聴いたドゥルーズ(ガタリ),法哲学でもかじろうかなぁと思って読んだロールズあたり……ここら辺ははついていけました……。マルクスやハイデガー,フッサール,ウィトゲンシュタインあたりは,教養程度に知っているだけなので,果たして自分の笑いが正しいものなのか,ちょっと自信がなかったりします……。

もっとも,パロディ漫画ってのは,理解できたら笑えるというわけでもないわけで,そこが難しいところなんですよね……。カッチリと忠実にパロディしすぎても「巧いけど笑えるのか?」なネタになってしまうし,逆にネタ元から離れ過ぎちゃうと,脈絡が無くなってしまいます。バランスが大切なんです……。

本書は,あたしが理解できるものに限って言えば,バランスが取れていて楽しめました。どこら辺をパロディしているのか解説してあったりもするので,「なんとなく知っている」といった程度の思想家でも笑えるんじゃないでしょうか。

いずれにせよ,眉間に皺を寄せて読むのは野暮な本です。いしいワールドに浸る気分で気楽に読むのが正解だと思います。

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