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『だれが「音楽」を殺すのか?』

2005年03月24日

だれが「音楽」を殺すのか?』(津田大介,翔泳社,2004年)

『だれが「音楽」を殺すのか?』

国内音楽業界における各論点を,分かりやすくしかも詳細にまとめた書籍です。

音楽業界のアレコレを云々するには,その背景となっている利益状況や法律問題を踏まえている必要があるわけで,なかなか軽々には口にできないところがあったりします。適当に感情的なことを口にしても,「フレームの元」になるだけですから。筆者さんは,そこら辺を意識して本書を編んだらしく,「あとがき」で以下のように書いています。

今の音楽業界のことをクソだと思ってて,その状況をなんとか変えたいなら,ニュースの背景にどういう問題が横たわっているのか,きちんと勉強するべきだ。

まったくもってその通りで,このことは音楽業界批判に限らず,ウェブのような公共の場で発言する際には,一般的に必要なことだったりします(そして自分に足りないことだったりもする……)。殊,音楽著作権周りの話になると,(あたしも含めて)感情的な議論になることが多いけれど,冷静に議論するためには,少なくとも本書に書いてあることくらいは,前提として踏まえている必要がありそうです。

あたしが音楽業界の話に興味を持ったのは,ここでのエントリで著作権法改正による輸入権の創設を取り上げたのがきっかけでした。エントリを書く前は,それなりに下調べをしてから書くわけですけれど,音楽業界のアレコレはなんとも難儀で,苦労したことを覚えています。これは,迂闊に手を出すと泥沼にはまりそうだと……。

音楽業界の場合,具体的にどんなことが問題になるのかというと,著作権を初めとした法律問題やレコード会社の経営問題はもちろんとして,CCCD や Winny に代表されるデジタル技術から,業界のビジネスモデルに至るまで,恐ろしく多岐に亘っています。しかも,それぞれの問題が,相互に有機的に連関していたりするもんで,余計に複雑に映ってしまうというわけです。

CCCD の話ひとつするのにも,著作権ビジネスの在り方や,当事者(レコード会社・アーティスト・リスナー等々)の利益状況を踏まえる必要があるわけで,決して容易なことじゃありません。本書では,豊富な資料と解説・注釈を使って,これらを分かりやすく説明しています。リファレンスとして使われるという目論見は,十分に果たしているんじゃないでしょうか。

もっとも,こういう問題を扱う場合,まったく中立の神様的立場(近頃は神様も中立じゃないようだけど)から書くことは,ほとんど不可能なわけで,リファレンスとはいえ一定の立場から議論に参加していることに注意する必要があります。その点,本書の筆者はというと,その肩書からも,

たとえ2万円程度のヘボいラジカセを使っている人でも

といった文句からも,いわゆる「ライトリスナー」の立場から自身の意見を述べているわけではありません(注:上記引用は(口は悪いものの)ライトリスナーを貶める意味で使っているわけではありません)。あくまでも,音楽業界に相当程度くいこんだ人の話というわけ。全般的に論点の提供・解説に努めていて,偏った感じは特に見受けられなかったけれど,そこら辺は頭の片隅に置いておいた方がいいと思います。

自分が書いたエントリも含めて,ここ数年の音楽業界ネタは,突っ込み所が満載なだけに,巷に溢れる論評も焦点がボケる傾向があったりします。発言を読む向きも書く向きも,本書の話を一定の常識として踏まえておくとメリハリが付く思います。まぁ……著作権周りの話なんてのは,本当なら裏方でやってもらうことなんでしょうけどね……。

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