Entry

『昭和史 1926-1945』

2005年04月25日

昭和史 1926-1945』(半藤一利,平凡社,2004年)

『昭和史 1926-1945』

今年は日露戦争の終戦100年だったりするもんで,巷の本屋には日露戦争関係の書籍が随分並んでいるようです。日露戦争というのは,言うまでもなく1904年から1905年にかけて,日本がロシアとやりあった戦争のことです。これまで小国だと思われていた日本が,大国ロシアをやっつけたってんで,一躍世界の強国として認知されるようになったのでした。

戦前の昭和史というと,「二・二六事件」だとか「太平洋戦争」だとかいった大きな出来事を中心に考えるのが自然なんでしょうけれど,(個人的に)昭和史を考える上で日露戦争は外せません。というのも,日露戦争以前が,列強の植民地にならないように近代国家の体裁を整えた時期だとすると,これ以後から終戦までの歴史は,名実ともに近代国家の仲間入りをして,あげく失敗するまでの過程として括ることができるからです。著者である半藤さんもそこらへんを指摘していて,冒頭で以下のように解説しています。

こうやって国づくりを見てくると,つくったのも四十年,滅ぼしたのも四十年,再び一所懸命つくりなおして四十年,そしてまたそれを滅ぼす方へ向かってすでに十何年過ぎたのかな,という感じがしないわけではありません。

つまり,初めの四十年が開国から日露戦争までで,次の四十年が日露戦争から終戦まで。そこから復興が始まって,四十年で平成に入ったというわけです。指摘が正しいかどうかは人によるんでしょうけれど,あたしはとても明快な見方で感心してしまいました。そういうわけで,戦前の昭和史は,日露戦争から始まるといってもよさそうなんですね。今年はなんとなく節目の年っぽいというわけです。

この頃は,日露戦争の終戦100年もさながら,教科書検定問題から中国の反日運動,はたまた憲法改正の話から日本の常任理事国入りの話といった具合に,戦前の昭和期を参照しなくてはいけない問題が一気に湧きだしてきました。そんなわけで,戦前昭和史を再確認すべく本書を読んでみました。

本書は,半藤氏が私的に開設した昭和史講座を,録音して書籍化したものです。なんでも,編集の方が「昭和史のシの字も知らない私たち世代のために,手ほどき的な授業をして欲しい」と,熱心にお願いしたんだとか。そんなわけで,本書は半藤氏の講義録のような体裁でまとめられています。講義録といっても堅苦しいものではなくて,おじいちゃんの茶飲み話よろしく,とても親しみのある会話調で,どんどん読み進めてしまいます。

内容は専ら政治史で,特に戦争を中心にしています。あたしの場合,この手の本は,(ミギであれヒダリであれ)論拠不足の与太話を買わないように特に慎重になるんですけれど,本書は豊富な参考資料をひもときながら丁寧に論拠を示していて,説得力を感じました。論拠となる資料と自分の考え方(評価)を区別して書くというのは,ある意味当たり前の話なんですけれど,なぜかこの手の本には,評価を先取りして事実を後付けするような本が多いんですよね……。

結局,半藤氏は,先の戦争に対して,

それにしても何とアホ戦争をしたものか。この長い授業の最後には,この一語のみがあるというほかないのです。他の結論はありません。

と評価するわけですけれど,本書を読む限り,あたしもそう考えるのが妥当なんだと思います。

一方,これは読後に感じたことですけれど,先の戦争にしても現在にしても,日本人の考え方って,さほど変わってないんじゃないかと思ってしまいました。つまり,「そうなっちゃったんだから仕方ない」みたいな考え方です。こういう現状追認的な考え方って,現代日本人の特徴として言われることがあるけれど,戦前の要所要所でも似たような構図が垣間見えてしまいます(「日本人」と一括りにするのも変なんですけどね……大勢の話です)。

もちろん,こういう考え方って,言い方を変えれば「未来志向的」とも言えるわけで,良い側面もあると思うんです。戦後の復興をゼロからやり直せたのも,「そうなっちゃったんだから仕方がない」みたいな意識が役に立ったところもあるのかもしれませんしね……。ただ,そういう気性が祟って,戦後も公共事業やら財政政策やらで失敗しているところを見ると,もう少しなんとかならんもんかとも思ってしまいます。あたしの思い込みかもしれませんけど。

ともあれ,本書は戦前昭和史の入門書としてはもちろん,憲法問題や教科書の話を考える土台としても,十分な内容を持っていると思います。これからしばらくは,戦争関係の書物が書店に並ぶ機会も増えるだろうし,それらを読むための入門書としても十分役に立つと思います。

Trackback
Trackback URL:
[2005年06月05日 14:21] 日露戦争 from 梟の森
試用初日は、草鞋の履き方を教えられ、鞄を抱えポストから郵便物を集める仕事で、両国 [more]
Ads
About
Search This Site
Ads
Categories
Recent Entries
Log Archive
Syndicate This Site
Info.
クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
Movable Type 3.36
Valid XHTML 1.1!
Valid CSS!
ブログタイムズ

© 2003-2012 AIAN