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最近読んだ本から

2005年05月03日

この頃はちょっと忙しくて,本くらいしか読んでいられません……。そういうわけで,ここ数日読んだ本をちょっとずつご紹介です。

当事者主権』(中西正司,上野千鶴子,岩波新書,2003年)

『当事者主権』

「当事者」というのは,社会において自分のニーズを自覚している全ての人のこと。本書は,その当事者が,自分の事柄に対して主体的に関与できる社会(「自分のことを自分で決められる」社会)について考えます。

ここ数年,とりわけ「障害者」「高齢者」「女性」「患者」「不登校児」といった(社会的)マイノリティが,自身のことですら主体的に関与することができない状況が自覚されてきました(注:「当事者」!=「マリノリティ」)。例えば,障害者が行政が作ったハコモノに隔離されて社会に復帰できない,とか,がんの患者が医師の治療方針に意見できない(意見すると見放される),といった具合です。このこときっかけにして,「当事者」の側から物事を考える,「当事者学」なる学問領域が認知されたんだそうです。

本書は,まず当事者を主体とした制度モデルとして,障害者自立センターの事例を中心に取り上げて,障害者の側から介助制度のありかたを考えます。このセンター,障害者が自分たちの需要に基づいて,自分たちで運営しているんだそうです。理念だけでなく実践と実証に基く議論で,とても説得力があります。

介助をはじめとして,「当事者」を取り巻く制度はどうあるべきなのか,また,これまで「当事者」の主体性を握っていた「専門家」(行政・医師・弁護士・カウンセラー等々)は,当事者の観点からどのように関わるべきなのか。興味深い話が満載です。

まんが パレスチナ問題』(山井教雄,講談社現代新書,2005年)

『まんが パレスチナ問題』

続きまして……今度はパレスチナ問題の本です。

毎度のことながら,普段読んでいる本はほとんどジャケ買いで,特に読もうと思って買う本は稀だったします。そんなわけで,本書を買うときも「パレスチナを勉強しようっ!」とかいった高尚な目的はサラサラありませんでした……。なかったんですけれど……読んでみたら,とても勉強になりました。

本書は,とかく複雑で日本人にはよく分からないとされている中東情勢を,まんがの体裁で分かりやすく説明しています。「まんが」というよりは,「絵本」に近いかもしれません。

内容は,イスラエル人のニッシム君とパレスチナ人のアリ君,そして一匹のねこが中東の歴史を旅するもの。キリスト教・イスラム教・ユダヤ教,それぞれの違いから始まって,紀元前19世紀の世界から,PLO のアラファトが死去したつい先日(2004年11月11日)までの出来事を扱っています。

簡潔で要を得た良書だと思います。エピローグにホロリときてしまいました。

安全と安心の科学』(村上陽一郎,集英社新書,2005年)

『安全と安心の科学』

さらに続きまして……今度は科学と安全の話。例によって,ジャケ買いです……。

ここ数年(そしてつい先日も),大規模な事故が連続して起きているせいか,巷では「危機管理」とか「リスクマネジメント」なんて言葉が流行りだしました。危険(リスク)を管理するとはどういうことなのか。医学,工学,機械学といった理科系な立場からはもちろん,社会学,心理学,哲学といった文科系な視点も含めて,「危険」を多角的に捉える試みがはじまっているようです。

もう1つは,「安心」です。「どれだけ危険か」は定量的に計測できるものだけれど,「どれだけ安心か」は計れません。そこで本書では,「安全」と「安心」の関係についても考えます。どこかの番組で,「ホウレンソウが汚染されている」なんていって裁判沙汰になったことがあったけれど,汚染による危険と安心感の関係はままならないものがあるようです。

The 9/11 Report』(National Commission on Terrorist Attacks Upon the United States 他,St Martins Mass Market Paper,2004年)

『The 9/11 Report』

最後なんですけど,これはまだ読みかけです……。

9.11 のテロに際して,アメリカ政府から独立した形でテロ調査委員会が設けられました。本書は,その委員会が取りまとめた最終報告書です。公的な文書なので,Web からも読むことができます(参照:「9-11 Commission Report」)。「それじゃ買うこともないじゃん」ということにもなりそうなんですけど,それを知ったのは買った後の話なもんで,いたしかたありません……(トホホ)。もっとも,本書は前半に New York Times の記事が掲載してあって,ちょっと得した感じです。

内容は WTC の事件だけでなく,時間的・地理的にも多角的な視点で,非常に詳細に事の推移を分析しています。公的な報告書とは思えない「読ませる」文体には,ちょっとびっくり。

……と,ここしばらくは,本ばかり読んでたわけですけれど,ジャケ買いのわりに良書にヒットする確率が高くて満足でした。今度の(本の)買い出しは,もう少し計画的にいこうかな……。

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