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もう少しだけ匿名の話

2005年05月16日

どうも匿名の話ってブログのためのブログ論みたいに自己目的化している感じがして,建設的だとは思えないんですけれど,もう少しだけ。不要な議論じゃないとは思うんですけどね(←とか言いながら結構書いているな)。

さて,読売新聞の記者が JR 西日本の会見で度を超した振る舞いをしたということで,巷のブログはすったもんだしています。個人的に,この話,当初は「匿名性」とはあまり関係がないとは思っていたんですけれど,一部で「会社が記者を守るのはよろしくない,記者の氏名を公表しろ」といった論調が高まっているようです。なんだか,匿名ブログを擁護していた向きも,新聞記者の氏名に限っては公表すべし,と言っているフシも……。立場が入れ替わり立ち替わりしているように見えるんですけれど,どうなっているんでしょう……。

そもそも,どういう経緯でこういう論調になったのかよくは分かってないんですけれど,先日 YOMIURI-ONLINE が匿名ブログを批判する記事を掲載した件を根に持って,上のような議論を立ち上げた人も多いんでしょうか(参照:「大流行『ブログ』でストーカーに狙われる」)。

匿名ブログについて扱っていた小倉秀夫氏のブログが終ってしまったということで(サイト自体はまだありますが),この話を事実上引き継いで牽引しているのは木村剛氏のブログ(週刊!木村剛)のようです。最近の話は,「新聞記者に憧れています」とのこと。この話,初めの,

現役のマスコミの方々が「ブログの責任論」を唱えることには違和感を持たざるを得ません。

というところは同意できます。

ただ,冒頭のマスコミ批判同様,終盤の話はよく分からないことになっていて,新聞記者の特権的な身分について,なかば揶揄を込めて批判しています。

曰く,

あっそうか、そもそも、匿名でしたね。

それは素晴らしい。何を書いても責任を問われないわけだ。うらやましいなぁ。是非一度、私も新聞記者になって、匿名性に護られている下で、攻めに攻めてみたいものだと思っています。本当に憧れますね、新聞記者には。

だそうです。

木村氏にいわゆる「責任」が何を意味しているのかよく分からないんですけれど,よくあるマスコミ批判のひとつと捉えていいようです。記者の匿名性を批判するところに焦点があるところが,ちょっと違うだけでしょうか。ただ,ネットにおける匿名性を考える上で,この議論は若干危ない要素を含んでいるような気がします。

周知の通り,新聞を初めとした報道機関には強力な特権があります。また,これまた周知の通り,この頃のマスコミは特権の上に眠る傾向が強いようで,報道被害や誤報の類が後を絶ちません。不祥事の後始末がへたっぴなのもよく知られているわけで,このような事情を背景にして,一部では,ネットコミュニティが第5権力としてマスコミを監視するモデルも主張されています。ここまでは分かります。

分からないのはここからです。すなわち,ネットコミュニティがマスコミを監視することは,マスコミ記者の匿名性を暴くこと(特権を剥奪すること)にあるのか,ということです。ネットコミュニティがマスコミと同じ言論機関として権力を監視する立場を主張するならば,マスコミの言論に付随する匿名性を攻撃することは自分自身の首を絞めることに思えてしまいます。この話を突き詰めると,「マスコミの記者でさえ匿名性はない,いわんやブロガー(含コメンター)をや」みたいな話になっちゃうんじゃないでしょうか……。

「馴れ合いはよろしくない,全員実名ガチンコでやれ」といった立場からの主張なら,実に正論で勇ましいとは思うんですけどね。匿名性を(ある程度)擁護する木村氏からこのような主張が出るとは思ってもみませんでした。

一連の話を見ていると,「匿名性」をめぐる議論状況がとても複雑な方向に向かっている感じがします。誰かまとめてくれる人いないかな。

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