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文脈の間隙を漂う技術

2005年08月18日

コンテクスト闘争の前面化」(北田暁大,ised@glocom)を読んでいて感じたことをつらつらと……。現実世界で可能な討議システムがネットで機能しないのはなんでなんだろう,といった話です。

ここに言う「コンテクスト闘争」という言葉は,的確な指摘だと思っていて,コンテクスト(文脈)を制した語り手が議論を制する(少なくともそのように見える)ように感じています。ここで繰り広げられる「闘争」では,一見まっとうな議論がなされているように見えるけれども,ある特定の文脈そのものに関する議論というよりは,文脈の奪い合いに過ぎなかったりします。つまるところ,相撲をとる前にとるべき土俵を奪い合っているといった感じ。議論が噛み合っていないように見える場合は,大抵本論とは別の部分で余計なエネルギーを消耗している場合が多かったりして……。

文脈を奪い合う局面になると,本論における理屈なんぞはどうでもよくなってしまうわけで,どうしても暴力が先鋭化してしまいます。どんな議論であっても,なんとなく政治的な結末(結論ではない)を向かえることになるってのは,それはそれで面白いんでしょうけれど,「これだけエネルギーを消耗して結局こういう結末かよ」みたいな徒労感を覚えるのも確かだったりします。

こうして考えてみると,現実的な問題として,ネット上の議論に存在する多様な文脈の中をどうやって漂っていくのがいいのか,といった処世術のようなモノを考える必要があるのかな,なんて思ったりします。

処世術のあり方としては「CMC空間の社会哲学――公共圏から遠く離れて」(ised@glocom - ised議事録 - 3. 倫理研第3回: 北田暁大 講演(3))で,とても詳しい分析がなされています。もっとも,ここでは割とはっきりとユーザの態度を類型化しているけれども,個々の個人と1対1で対応しているようには思えません。特定の立ち位置に立つことを意図している向きでもない限り,一般的には,基本に据えている態度はあるものの,論点や局面に応じて態度を変えているのが普通なんじゃないでしょうか。

ともあれ,この分類にそって自分の立ち位置を考えてみると,個人的には,「3-1-4. リベラリズム(≒サイバー保守主義?)」が,文脈の海を漂うための基本的な立ち位置としては都合がいいのかな……なんて思ったりします。「基本的にはどんな価値でも受容しますよ,でも相互の価値が反目するのはお互いにとってよくないから利益を調整しましょう」な態度といえばいいでしょうか。

もっとも,こういう態度って,現実の議論においては折衷的な結論を支持する場合が多かったりするわけで,どっちつかずの優柔不断な立場に見えることがあったりします。下手を打つと,反目する双方を敵にまわして板挟みに遭うことも……。

また,重層的な文脈を調整的に受容する態度であることは,それぞれの価値を相対化するために「高み」に立つ必要が出てきます。ここら辺が議論一般でなんとなく認められている作法(発言者どうしは同じ立場であって,誰も他者の高みに立つことはできない)と相容れないところがあるわけで困りもんです。

とりあえず,センシティブな議論でこの態度をとることは,現実問題として得策でないといったところでしょうか。元気があるときは文脈争奪戦に参加して祭を盛り上げる,そうじゃないときは黙ってやりすごすといった態度……。なんともアド・ホックですね。でも,それが処世術ってもんなのかな。

【追記】
処世術云々とは少し話がそれるけれど,ついでながら……。

これは自戒なってしまうけれども,多様な文脈を相対化する技術としては,なるべく多くの文脈を踏まえられる素地を持っていることが,リテラシーの一環として重要なんじゃないかと思っています。特にネットでは,発言者がどういう文脈で発言しているのか分からないことが多いわけで,ともすると,相手の発言を,自分の理解できる文脈(だけ)に無理矢理ブロットして理解してしまうことがありうるからです。

例えば,匿名の話のように,法律,政治,文化,情報技術,経済・経営,思想,といったおのおのの領域で,なにかしらそれっぽいモノが書けてしまうような話題は,あらかじめ「どの文脈で話をしているのか」といった枠組みを設定しておくと,混乱を予防できることは言うまでもありません。それに加えて,法律の話をしているのに思想ネタが入ってくるような場合のように,議論に別の文脈が入りこんだときであっても,一蹴しないで「とりあえず聞く」という態度はあった方がいいのかな……と思ったりします。「とりあえず聞く」ためには,相手の文脈を踏まえられるだけの最低限の素地が必要なわけで,その意味で専門バカはいかんなぁ……とも。

いずれにしろ,言う分には簡単なんですけど,実践するのは難しそうですね。

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