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『ウェブ進化論』の感想と近未来の妄想

2006年03月16日

書店で見かけたら買おうと思っていたんですけれど,行く店寄る店どこにも置いてないもんで,「もういらねえよ!」と思っていたところ,たまたま見つけました。出版後たった1ヶ月(3月10日)でもう第5刷……えらいことになってますね。

本書は,「My Life Between Silicon Valley and Japan」や「英語で読むITトレンド」でおなじみの梅田望夫氏が,これまでの著作をベースに書下したものです。まとめてみると,「IT 産業(業界|界隈)の進展で,『次の10年』は産業構造が大きく変わることになるからね……乗り遅れたら大変だよ」みたいな話。

ネットの世界(本書にいう「あちら側」)では,コスト勘定のしかたにしても利益の上げかたにしても,実世界(本書にいう「こちら側」)とはまるで違います。そういった新しい「場」が生まれると,これまで考えもつかなかったモノやコトが商売になったりするんだよ。それはもう始まっているんだよ,というのが内容です。具体的には,Google の各サービスや Amazon アフィリエイトの話なんかが中心で,お馴染みの向きには,あらためて言うこともないほどお馴染みの話が大半になっています。R30氏が「これは日本のエスタブリシュメント層に向けて書かれた本だ」みたいなことを言っていたけれど(参照:書評「ウェブ進化論―本当の大変化はこれから始まる」・上R30::マーケティング社会時評)),ほんとうにそんな感じ。日本のエスタブリッシュメントは,楽天や Yahoo! にビビってる場合じゃない,といったところでしょうか。

そんなわけで,おそらく本書は,今時ネットでブイブイいわせてる(死語)向きにとってみたら,とりたてて珍しい話はないと思います。もっとも,梅田氏の近未来観はそれ自体とても情熱的で,楽しく読ませてもらいました。

一方で,本書を読んでいて思ったのは,ネットにおけるユーザが,ずいぶんと「マス」として扱われているなぁ,ということでした。もっぱら経営周りの話だし,冒頭で「『神の視点からの世界理解』が今後の潮流になる」といった話をしていることから,関係ないっちゃ関係ないし,そのことに踏み込むと身も蓋もなくなっちゃうんですけどね。まぁ,揚げ足取りです。

例えば,「玉石混交問題」を扱った箇所で,こんな話がありました。玉石混交問題というのは,「ネット上の情報は玉石混交だからアテにならん」といった話のことです。

そしてブログが社会現象化した第二の理由とは、ネット上のコンテンツの本質とも言うべきこの玉石混交問題を解決する糸口が、ITの成熟によってもたらされつつあるという予感なのである。この本質的問題が解決されるのなら、潜在的書き手の意識も「書いてもどうせ誰の目にも触れないだろう」から「書けばきっと誰かにメッセージが届くはず」に変わる。そんな意識の変化がさらにブログの増殖をもたらす好循環を生み出している。

ではその原因となるITの成熟とは何か。一つはグーグルによって達成された検索エンジンの圧倒的進歩。もう一つはブログ周辺で生まれた自動編集技術である。

グーグルの検索エンジンが行っているのは、知の世界秩序の再編成である。

『ウェブ進化論ーー本当の大変化はこれから始まる』(梅田望夫,2006年,ちくま新書,p139)

しばらく前に「Google 八分」(Google のインデックスに登録してもらえないこと)なんて言葉が生まれていて,それを引きずっていたからかもしれませんけど,Google ひとつに任せるのは個人にとってどうなんだろう……と思えてきてしまいました。極端なことを言えば,結局のところ,「見てもらえないものは見てもらえない」という話になりかねないんじゃないか,と。いや,見てもらえないことがいけないわけでなくて,見てもらえない原因が「Google 独自の検索アルゴリズム」のみにある,というところに少し怖さをおぼえるわけです。

かつて,「こちら側」の覇権を競って Microsoft と Netscape がやりあったとき,勝者の MS は「こちら側」の秩序を作りました。HTML ひとつとってみても「IE 対応ページにあらずんばウェブページにあらず」といった感じ。えらく窮屈でしたね(今もそうか)。それと同じように,Google の話も舞台が「あちら側」に移っただけで,本質的には秩序の一元的な再構成といった点で変わんないんじゃないの?と思うんです。庶民的には。

個人的には,Google によって「あちら側」がある程度「統合」されたら,もう一度「分散」してほしいなぁ……と思っています。イメージとしては,特定の検索エンジンだけに依らないで,ブログ・システム(CMS)自身が自律的に関連する情報や必要な情報を検索したり,他のブログとやりとりするようになる,といった感じ。ユーザであり庶民である個々人が,Google をはじめとした大手企業の手助け一辺倒にならないで,「主体」として存在できるようなネット環境があればいいなぁ……と思うわけです。それが商売として成り立つのかは知りませんけど(ほんとに揚げ足取りだ。ごめんなさい)。

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