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「お疲れさま」と「ご苦労さま」の関係を考える

2006年10月02日

ねぎらいの言葉に,「お疲れさま」と「ご苦労さま」というのがあります。「ご苦労さま」が目上が目下に対してねぎらう言葉で,「お疲れ様」が目下が目上に向かって使う言葉,というのは,よく知られているところ。

ただ私のようなひねくれた人間も社会には少なからず(多分)いるわけで、「ご苦労様」の語源を知らずに使って、「あぁこの人は語源を知らないんだな」と思われる可能性は存在するわけです。まぁそれでもいい、というのなら「その言葉遣いやめろ」とまでは言いません。言えません。

週刊!木村剛 powered by ココログ: [FJオンラインDの日記]  「ご苦労」と「お疲れ」の間で

言葉の話をしだすとキリがないんですけれど,こういった礼儀にまつわる表現は慣用表現になっているので,語源を持ち出すと大抵野暮になってしまいます。ただ,ねぎらいの言葉については,そもそも目下が目上を「ねぎらう」ことなんてあるんだろうか,とぼちぼち思っていたのでした。

そんなところ,あたしのお気に入り,ことばおじさんでお馴染みの「気になることば」で,似たような話が取り上げられていたようです。

そもそも「ねぎらう」=「ねぐ」という言葉は、目上の人へ「加護を願い祈る」、目下の人へ「いたわる・ねぎらう」という意味です。つまり「労をねぎらう」という行為は目上の人に対しては、想定されていません。では、ご苦労様だけでなく、お疲れ様も使えない・・・!?

NHK - 気になることば 「ご苦労様? お疲れ様?」

引用に続く話として,「NHK - 気になることば 「お疲れ様、その後。」」も参照するといいかもしれません。

ここから先は,「ねぎらう」という言葉から感じるあたしの語感と推測なので,断定調では言えないんですけど,元々上下関係のあるところで,目下は目上を「敬い」こそすれ,「ねぎらう」ことはしなかったんじゃないかと思います。どうしてか。

相手の苦労は,相手と同じ立場かそれ以上に立っていないと分からないはずだからです。

理想的な上下関係(支配関係)ってのは,上から下が見えるけれども,下から上は見えない,という状態です。つまり,下からは上が何をやっているのか分からない,けれど上の人は下がやっていることを掌握している,ということ。掌握しているからこそ,ねぎらう(労をいたわる)ことができるわけで,何をやってるのか分からない人をいたわることなんてできません。逆に,上の人間であるにもかかわらず,下の人間からねぎらわれるということは,「ご苦労さま」であれ「お疲れさま」であれ,ねぎらわれている時点で,「同列かそれ以下に置かれた」と見るべきなんじゃないでしょうか。

マナー云々の前に謀反の企てを感じた方がいいかもしれません(※ ジョークデスヨ)。

もしかすると,「ご苦労さま」と「お疲れさま」の使い分けは,むしろこうした上下関係が元になっているのかもしれません(※ 完全な憶測です)。つまり,下の人間からしてみると,「苦労しているかどうかは分からないけれど,疲れているかどうかは(同じ人間として)分かる」ということ。こう言ってもいいかもしれません,疲れるべき仕事をしている(苦労している)かは分からないけれど,現に疲れているかどうかは,下の人間でも分かる。

そうした意味で考えると,「ご苦労さま」と「お疲れさま」の区別は,同じ相の上で対立するものというよりは,むしろ全く次元が異なる関係にあるんじゃないかと思えてきます。「お疲れさま」が,相手の仕事に深く立ち入らずに,相手をいたわるのに対して,「ご苦労さま」は相手の仕事の内容にまで立ち入って,文字通りねぎらうのに適している,と……。当然,会社等々では相手の仕事に立ち入る(立ち入らざる)べき権限関係があるわけで,これは上下関係といってもおかしくありません。

そう解釈すると,「ご苦労さま」は目上が目下に対して使う言葉だというのはもちろんとして,「お疲れさま」は必ずしも目下が目上に対して言う言葉と固定する必要もない気がします。ビジネスマナーを見ていて特に思うことに,語源云々をこねくり回して無難なルールを作ってしまうことがあります。あたしの憶測が正しかどうかは措いておくにしても,「労をいたわっていること」をどううまく伝えるのか,という話を本来考えるべきなんでしょうけどね(青臭い話になってしまった)。

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