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空気を読むコンピュータは使えない

2006年12月18日

うちにある湯沸し器は,沸騰するとけたたましい音でその旨「お知らせ」してくれるんですけれど,どうにも人間同士の会話に割って入ることが多くて困っています。音量調節とかないのかしらん。どんなに人間同士の会話が熱くなっても,沸騰のお知らせの前ではシンとなってしまいます。

こういう話の腰をボキボキ折るようなマイコンは,人間同士の話と自分の「お知らせ」との優劣関係を認識できないのが困ったところです。空気を読んでもらいたいもの。

この点で,もし湯沸器が人間並に空気を読むことができたら,どのように振舞うでしょう。とりあえず,自分のミッションはお湯が沸いたことを知らせること。他方で,お知らせする相手は「空気を読め」という……。楽しいお話に水を注すようなことはしちゃいけません。でも伝えなくちゃいけない……なぜなら,それが湯沸器の湯沸器としてのアイデンティティでもあるからです。湯が沸いたことを知らせない湯沸器なんて湯沸器じゃない,といったところ。これは困ったことになります。一大事です。

おそらく,コンピュータに葛藤が生まれるとしたら,「愛」とか「恋」とかいった人間にもよく分からないもん以前に,こういうもんが先に立つんだと思います。伝わらない可能性はあるけれどそっと小声で「沸きましたよ」と言って使命を果たしたことにするのか,それとも少し冷めちゃうけれど会話が終わるまで待っているのか……そもそも,プライオリティの問題として,人間同士の会話と自分の「お知らせ」を同一直線上に並べること自体,(コンピュータ的に)正しいと言えるのか……人工知能にはここら辺から葛藤してもらいたいもんです。

一方で,人間以上に空気を読んで,絶妙なタイミングで沸騰をお知らせする人工知能が仮にできたらどうでしょう。これはこれで問題だと思うんです。

というのも,たかだかコンピュータにこういうことをされると,反対に人間様のコミュニケーション不全が露呈してしまうからです。葛藤しないまま,けたたましく鳴くマイコンを見て,人間様は「コミュニケーションする動物」でいることができます。つまり,湯沸器のけたたましさは,湯沸器のアイデンティティであるのと同様に,人間のアイデンティティも裏側から支えているように思えるというわけです。こういうもんを,コンピュータは易々と侵犯しちゃいけません。

そういうわけで,けたたましく鳴く我が家の湯沸器も,それはそれで「便利なモノ」のひとつなのかも,と思ったりするわけです(なんのこっちゃ)。

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