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読書メモ - 売買と賃貸借の違いで資本がどうとかこうとか

2007年02月05日

引き続き『「資本」論』を読んでいます。買った当初,何の本だったのか分からなかったんですけれど,どうも社会学 + ミクロ経済学で「ミクロ経済学原論」みたいな話のようです……って,今更何言ってるんだ。読み直しが必要だ。

「資本」論
「資本」論
posted with amazlet on 07.02.04
稲葉 振一郎
筑摩書房
売り上げランキング: 153873
おすすめ度の平均: 3.5
4 アウシュビッツを擬制によって抑圧することは、本当に可能なのか?
2 いろいろ詰まってます
4 さらなる議論の進展に期待

本書は,別個に参照する本を引きながら読んでいるもんで,読み進むのに結構時間がかかっています。今やっと半分読み終わったところ。

んでもって,まだ全体について話すことはできないんですけれど,またもや気になるところがあったのでメモ。今回は,割と自分の領域に近いので,アホっぽいことは言っていないと思います。話としては,売買と賃貸借の違いって何なんでしょうね,という話。

これと関連して更に重要なことは、通常買ったもの、購入したものの「転売」は許されても、借りたものの「転貸」は許されない、ということです。ものを貸すということは貸主にとっては、貸したものが返ってこないかもしれないというリスクの他、返ってきたとしても痛んでいたり消耗していたり、あるいは返ってくるのが遅くなったり、というリスクが伴います。貸し賃は言わばそのリスクに対する報酬です。ところが借り手による第三者への転貸、又貸しは、貸主の与り知らないところでこのリスクが増幅されてしまう、ということを意味します。つまりその限りで、貸借取引を特殊な売買取引と見なすことには、つきつめれば無理があるのです。(民法的に言えば、債権と物権は区別される、という感じでしょうか。)

『「資本」論』(稲葉振一郎,筑摩書房,2005年,p144)

この文章を読んでいて,いくつか気になるところがあるんですけれど,とりあえず,最後の括弧書きに注目してください。「民法的に言えば、債権と物権は区別される、という感じ」というところですね。ここで比べられているのは,売買契約と賃貸借契約なわけですけれど,まず,どっちが「物権」で,どっちが「債権」なんでしょう。

売買契約も賃貸借契約も契約ですから,これらの契約から直接生じる権利は,いずれも債権です。一方,契約の目的(目的というのは客体とか対象のこと)はというと,売買契約が物の所有権であるの対して,借地権は債権です。つまり,借地権は物を使用収益することができるわけですけれど,債権ですから「原則として」貸主にしか主張できないということです。どこかの権兵衛さんが勝手に自分の借家に住み始めても,借地権に基いて直接権兵衛さんに「出てけ!」とは言えないわけですね。ただ,この借地権等々も物権化が進んでいるわけで,借地や借家に関する限り,ほとんど物権だと思ってよさそうです。どっちが「物権」で,どっちが「債権」なんだ。

ということで,振り返って読み直す。

この一節は,元はというと,「資本」の話との関係で「転売」あるいは「転貸」できるかを考えてみよう,という話だったのでした。たしかに,売買契約は所有権そのものが移転しますから,後々他の誰かに転売するのも自由です。一方で,転貸はというと,民法上は原則として禁止されています(民法612条1項)。

こうして見ると,売買と賃貸借は,転売あるいは転貸の可否,といった違いが浮き立ってきます。

もっとも,転貸の禁止はというと,引用に言うほど厳しいものではなくて,貸主の承諾を得れば転貸することができることになっています。また,勝手に転貸されたら,貸主は賃貸借契約を解除することができるんですけれど(同612条2項),この解除権の発生も判例上はかなり制限して解されているようです(「賃貸人に対する背信行為」となる転貸じゃないと解除できない)。そうして見ると,売買と賃貸借の違いも微妙に相対化されそうな感じ。ただ,ここら辺は,瑣末なことなので措いておくことにします。

気になるのは,賃貸借の対価についての記述です。引用の該当箇所をもう一度抜き出します。

ものを貸すということは貸主にとっては、貸したものが返ってこないかもしれないというリスクの他、返ってきたとしても痛んでいたり消耗していたり、あるいは返ってくるのが遅くなったり、というリスクが伴います。貸し賃は言わばそのリスクに対する報酬です。

『「資本」論』(稲葉振一郎,筑摩書房,2005年,p144)

これは少なくとも法律上,どうなんだろう,と思ってしまいます。どうしてか。

「リスクに対する報酬」という言葉がちょっと曖昧なんですけれど,つまるところ「リスクに対する対価」のことなんだと思います。けれど,通常,貸したものが返ってこないときや,返ってきたとしても痛んだり消耗したりしたときは,損害賠償を請求することで調整を計ります。もし,賃料が賃貸物に対するリスクをヘッジするための対価だとしたら,賃料がその算定に入るはず。でも,普通そういうことはしません。

また,賃貸借の場合,損害賠償のリスクをヘッジする方法には,敷金があるわけで損害賠償の担保として機能しています。賃料がリスクヘッジの対価だとするなら,敷金はそもそもいらない,あるいは,一時的な保証金としての役割しか持たないはずです。けれど,借家人は10年住もうが20年住もうが,賃貸借が終了するまで「敷金返して」とは言えません。

周りくどくなりました。結局のところ,少なくとも法律上賃料はリスクもへったくれもないわけで(ないわけじゃないか),土地なり家なりを「使用させてあげること」に対する対価であることが原則になります。土地は利益(法律上は果実という)を産むわけで,その部分だけを取引の対象にしよう,というのが賃貸借の根っこなんだと思うんですね。リスクを考慮するのは,おそらく消費貸借(金銭の貸借)の話だと思うんですけれど,どうなんでしょ。

で,本書の「民法的に言えば、債権と物権は区別される、という感じ」に戻るわけですけれど,うーん……分からない。どうやってつながるだろう。仮に賃貸借がリスクを対価として取引されているとしても,売買だって代金回収のリスクがあります。リスクと資本って,どういう風に結び付いているんでしょう。素人なもんで分かりませんです。はい。

おそらく,本書では,「資本」を説明するために,物が利益(果実)を産む場合として賃貸借,そうでない場合として売買を挙げているんだと思います。けれど,どうも話がつながりません。大学の先生が書いた本だから,筋は通っているはずで,間違っている可能性があるとしたら,こっちの可能性が高いんですけどね。

ちなみに,転貸した場合に,「リスクが増幅」するかどうかも,法律的に見ると少し怪しいところがあります。ものが傷つく可能性が増幅するかは,転借人の性質によるわけだし(それをリスクというのか?),転借人は賃借人だけに義務を負うわけじゃなくて,賃借人にも「直接」義務を負うからです(613条)。つまり,賃貸人は転借人から直接賃料を取れるし,損害賠償も請求できるということです。

うーん……なんだか読むのにかなり難儀しているな。

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