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読書メモ - 解説で本編が台無しになるという例

2007年05月19日

古本屋で買った読み物を朝の電車でボチボチ読んでいます。朝の寝惚けた時間帯は,軽めの読み物の方がいい感じ。読んでるうちに頭も回ってきますしね。

気まずい二人
気まずい二人
posted with amazlet on 07.05.18
三谷 幸喜
角川書店 (2000/02)
売り上げランキング: 225821
おすすめ度の平均: 4.0
4 ホント気まずい対談集ですね(笑)
4 盛り上がりません
5 読み手の力量

今日読んでいたのは,三谷幸喜の対談集です。人見知りで話下手な三谷氏が,有名人の面々とお話の練習をする話。ただ,これを単純に対談集として読むと,あまり面白くありません。せっかくト書まであるのは,三谷氏本人があとがきで語っているように,戯曲として読ませるためなわけだし,それに従って読むのがおすすめです。

三谷氏の脚本は,最後になってイイカンジにまとまるところが読みどころなんだと思います。どこかで出てきた伏線なりサイドストーリーなりが,最後にちょろっといい味を出す……。そんな感じで,ラストシーンのラストシーンらしい全体感が強調されます。

本書『気まずい二人』も,「気まずさ」から出てくる「おかしみ」を強調するために,様々な(表現上の)工夫が凝らされています。言ってみれば,そこら辺が読みどころなわけで,三谷氏の内面を探ろうとか,なんちゃらの How to を知ろうとかいった類の「対談」では,少なくともないはず。対談というと,大抵,素顔(の演出)や本音(の演出)を表現するのに手っ取り早い方法ですけれど,三谷氏は本音を語る人の前に表現者でもあるはずですから。

で,本書のあとがきなんですけれど,香山リカ氏の解説が,見事に本書を台無しにしてくれていて,なんだかなぁ,な気分になってしまいました。神経症患者の治療法に「直面法」(自分が一番恐れている状況にあえて飛び込む治療法)なるもんがあるんだそうで,三谷氏はそれを試みている……直面法もいいんじゃないかと思った……云々,みたいな話。

〔三谷氏は〕「初対面の人は苦手」という根本的な傾向はそう変わっていないようだが、少なくとも表面的な話術に関しては一歩、また一歩と上達しているようだ。精神科医としてはこの「表面的な上達」がついには人格の深いところにまで働きかけ、患者さんの(あ、違った。まぁいいか)真の自信や対人交流への抵抗の現象につながるかどうか、というところが気になるところだ。

しかし、雑誌やテレビで見ているかぎり、「ドラマの打ち上げでスターに囲まれる三谷さん」とか「人気脚本家M氏、叶姉妹と深夜の焼肉パーティ!?」といった情報はまだ届いてこない。いったいどうなっているのか。決死の直面法は頓挫したのか、それともまだどこかで第245回あたりが続行中なのか…。三谷さん、今度、経過を教えてください。あ、そのときは保険証をお忘れなく。

※〔〕部は aian

「解説」(『気まずい二人』,三谷幸喜,角川書店,2000年,pp263-264)

香山氏本人としては,おそらくかなりユーモアを利かせたつもりなんでしょうけど,この台無しっぷりには「あーあ……」といった感じです。

戯曲として楽しむ場合,まずもって「うそっこ」の話として読むのが基本です。もちろん,本書の対談は現実の対談を採録したわけだから,うそではないんですけどね。けれど,これは,三谷氏の演出が施された上での対談衆です。んでもって,普通,映画や小説の登場人物について,精神分析や治療法を解説するってことはないわけで,いくらユーモアを利かせたところで,態度そのものがマジメになってしまいます。作り物あるいは演出の施されたものに対して,現実の尺度を持ち込むと,大抵無粋な結果になるもんなんですよね……。

また,「枝豆ともやし」の話にしても,対談としての全体感を演出する笑いどころなわけで,連載の読者は「そろそろ『枝豆ともやし』の話が出るぞ」とか期待しつつ読んだりするわけです。こういう点についても,香山氏は「言っちゃ悪いけどどうでもいいこと」と現実の側から一蹴してしまいます。「どうでもいいこと」を話さなくちゃいけなくなる程追い詰められた(演出上の)三谷氏を見るのがおかしいのに……。

なんつーか……シャレが通じない人の話を最後に読まされて,熱も冷めちゃいました。なんだかなぁ……。

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