Entry

読書メモ - 去勢とあきらめ

2007年05月31日

しばらく前に読んでいた本から。

社会的ひきこもり―終わらない思春期
斎藤 環
PHP研究所 (1998/11)
売り上げランキング: 79587
おすすめ度の平均: 3.5
4 現場人の肌感覚&学問的・理論的バックボーン
4 ひきこもり
5 ひきこもりの患者の心境がよくわかる

ひきこもりそのものの分析や,具体的な対処については,あたしが近しい立場にいないことから,あまり興味をそそられなかったんですけれど,社会問題として捉えたときの「ひきこもり」の解釈が面白かったので,メモメモ。

端的にいって、現在の教育システムは、「去勢を否認させる」方向に作用します。

どういうことでしょうか。まず「去勢」について簡単に説明しておきます。去勢とはご存じのように、ペニスを取り除くことです。精神分析では、この「去勢」が非常に重要な概念として扱われます。なぜでしょうか。「去勢」は、男女を問わず、すべての人間の成長にかかわることだからです。精神分析において「ペニス」は「万能であること」の象徴とされます。しかし子どもは、成長とともにさまざまな他人との関わりを通じて、「自分が万能ではないこと」を受け入れなければなりません。この「万能であることをあきらめる」ということを、精神分析家は「去勢」と呼ぶのです。

人間は自分が万能でないことを知ることによって、はじめて他人と関わる必要が生まれてきます。さまざまな能力に恵まれたエリートと呼ばれる人たちが、しばしば社会性に欠けていることが多いことも、この「去勢」の重要性を、逆説的に示しています。つまり人間は、象徴的な意味で「去勢」されなければ、社会のシステムに参加することができないのです。

『社会的ひきこもり―終わらない思春期』(斎藤環,PHP研究所,1998年,p206)

あたしゃ最近,「若さ」みたいなもんを客観視できるようになってきた気がするんですね。妙にジジイじみてるんですが……。

んでもって,その「若さ」の中にあるなんつーかモヤモヤとした小便臭さ(失礼)というか,「うわ若っ!」って思うようなところが,引用にある「万能感」に集約されているような気がしたんです。これは,別に「最近の若者は」みたいな話とは違っていて,他人との関わり方の側面で,「自分にできること」と「他人にお願いしないとできないこと」の切り分けがスムーズにいくかどうか……みたいな,慣れの話なんじゃないかと思うんですね。

「社会性を身に付ける」ってのには,文字通り社会との接点をどう作っていくかとかいった,テクニカルで対外的な意味があるのはもちろんですけれど,それとは別に,「自分にできて周りにできないこと」や「周りにできて自分にできないこと」の見極めをつけるといった対内的な意味があるんだと思います。で,見極めをつけるってのは,ある意味,自分のある可能性に見切りを付けることでもあるわけで,そこら辺が「去勢」と象徴付けられるもんじゃないのかなぁ……と,つらつら(と,本文で言っているところでもあるんですけれど)。

そうしてみると,ちょっと話が飛ぶんですけれど,子どもに「将来何になりたい?」とか尋ねるよくあるシーンは,なんとなく間抜けに見えてしまいます。可能性でいっぱい(というか,見切りを付けていない)の子どもに,将来を限定させるのは愚問ってもんじゃんじゃないか……と。あたしゃ,子どもの頃,あまりに同じ質問ばかりがくるもんだから,デフォルトで「大工」と答えることにしていた覚えがあります。んなもん決めてねーよ,ってのが本音だったわけですが。反対に,「○○君/ちゃんはお絵描きが上手だから,将来は漫画家になれるかもね!」みたいに,大人の側からありうる可能性を具体的に示す方が,いい感じ。

本書では,「去勢は痛いけれど乗り越えなくちゃいけないもの」といった具合に書かれていて,おそらく専門的にはそうなんでしょうけれど,見極めを促す方法には「社会の荒波」みたいな厳しいもんの他に,少しずつ去勢をうながしていく仕組みもあるんじゃないかとは思うわけです。

まぁ,周りを見ていると,去勢しきれてない大人(あたしより年上)も結構見るから,若者が去勢できないことに何か問題があるのかといえば,それ程大したことでもないようには思えちゃうんですけどね。それが「ひきこもり」の本質的な原因とも言い切れないわけですし。なんだか,オチなしですけど,そんな感じ。

Trackback
Trackback URL:
Ads
About
Search This Site
Ads
Categories
Recent Entries
Log Archive
Syndicate This Site
Info.
クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
Movable Type 3.36
Valid XHTML 1.1!
Valid CSS!
ブログタイムズ

© 2003-2012 AIAN