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最近こればっかだけれど今日買った本 - 現代批評理論のすべて

2007年08月02日

昼頃本屋をぷらぷらしてて見つけた本。

現代批評理論のすべて
大橋 洋一
新書館 (2006/03)
売り上げランキング: 55869

文学批評の批評理論を紹介した本です。タイトルに「すべて」と謳っているだけあって,批評の分析から人物紹介,さらには用語集から参考書籍にいたるまで,その手の話が網羅されています。便利な一冊。本書は文学批評の分析が中心になっているけれども,広く文化批評を読む(書く)方も,一読しておくとよさげな気がします。

文学批評(理論)なるもんは,例えば小林秀雄のように,難しげで国語好きを減らすような文章といったイメージがあわけで,実際そうなんでしょうけれど,ともかくそういうもんが「文学理論」として通用していた時代もあったのでした。ネットの文学批評なり文化批評なりを読ませてもらっていると,そこら辺の残滓がある(というか,染み付いている)文章に出会うこともあるけれども,こうしたスタイル(だとあたしゃ思う)について,大橋氏のまえがきが読ませるものだったので引用しておきます。

かつて日本では、批評理論は、エリートの縄張りでもあった。理論は関連分野の豊富な知識を必要としたため、優秀な頭脳の持ち主でなければ専門家になれないし理論の適用も望めなかった。だからたしかに威張ってよい面もあった(頭の良すぎる理論家)。また理論は、それに惹きつけられた優秀な頭脳の持ち主たちを、守旧派の批評家や研究者たちからの残忍な攻撃(文学を理論で理解しようとする、頭の悪すぎる愚か者という非難)にさらしてしまった。彼らはキャリアの危機すら感じはじめ転向を余儀なくされた(現在、反理論派である研究者の多くが、かつては理論派であったことは、あまり知られていない)。理論(家)は必要以上に事態を錯綜させる頭の良すぎるバカであると同時に、文学を画一的で図式的な基準で判断する頭の悪すぎるバカである。かくして理論の鼻持ちならないエリート主義者(彼らの存在は時に反理論派を生み出した)と、反理論への過激な転向者(保守派への転向者は、通常の保守派以上に保守的になる)とが角突き合わせる対立図式。これが、私自身よりも少し上の世代、すなわち団塊の世代の研究者たちが織り成す、うんざりする光景だったのだ。

「ポストセオリー時代の批評と理論」『現代批評理論のすべて』(大橋洋一 他,新書館,2006年,p7)

おそらく,理論の持つエリート主義的な傾向なるもんは,文学(批評)理論だけにとどまらないわけで,例えばオタク分析のような(広い意味での)サブカル批評にも当てはまるもんなんじゃないかと思っていたります。

ここら辺の話は,特にオタク批評の一部に感じられるんですけれど,いまやオタクもパッケージ化されたその枠内(アングル)の影響がかなり強まっているんじゃないか,と思ったりするわけです。サブカルチャーやカウンターカルチャーと呼ばれるあれこれの動向は,もとはといえば,ハイカルチャー的なもの(あるいは前世代的なもの)に対する反動や闘争といった実践があったとされています。しかしその一方で,サブカルそのものが理論化され自己言及されるやいなや,それはパッケージ化されて権威化(ハイカルチャー化)してしまう。ものすごい皮肉に見えるんですけど,どうなんでしょ。

例えば,あるアニメ作品の場合,書き手のメッセージなり意図なりが(ほぼ)絶対的な影響力を持っているのに対して,受け手の感受性については,とんと無頓着な批評があったりします。メッセージなんか伝わらないのに,理論家はそれを必死にパッケージ化して宣伝する。とある制作者の制作談話が,それでもなければ作品を「正しく」鑑賞できないかのように流布される。

こうした態度なりスタイルなりは,もともとハイカルチャーの側にあったわけで,なんだかなあ……な感じになるわけです。「必要以上に事態を錯綜させる頭の良すぎるバカ」を軽やかにかわすには,受け手もそれなりに利口にならなきゃいけないってことなんでしょうかね。

本書の話に戻ると,本書は理論の紹介となっているけれども,まえがきにもある通り,パッケージ化の道具として使うべきではない。むしろ,「頭の良すぎるバカ」を軽やかにかわすための知恵として位置付けるべきだと思うわけです。現代思想の文学理論への応用について知りたい向きにもおすすめ。

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