Entry

昨日観た映画 - 『ザ・マジックアワー』

2008年06月08日

三谷幸喜監督・脚本の最新作,ザ・マジックアワーを観てきました。断片的なコメディの中に,目立たないながらも通底したメッセージがあるのが,三谷節だと思うんですけれど,本作でもそれは一貫しています。

死ぬのは怖くない。怖いのは,誇りを失ったまま生き続けることだ。

みたいな台詞は,きっと,村田(佐藤浩市)の俳優人生に直接かかってる。誇りを失わないまま「死ぬ=俳優業をたたむ」ことを選択する村田がいる一方で,高瀬(柳澤愼一)が別の見方を見せるシーンは印象的です。

今日マジックアワーを逃したら,明日のマジックアワーを待てばいい。

もうひとつ,本作は,映画(ひいては物語)に対してメタ的な視点に立っているところも印象的です。映画みたいな街で起こる映画みたいな出来事が,現実と虚構の区別をないまぜにしてしまいます。ある意味で,これは「映画の作り手」から見た映画観だとも思うわけで,作り手からしてみるとまた別の感想があるのかもしれません。裏方の楽屋ネタみたいな。

政治的に少し穿った見方をすれば,本作は,昭和映画に典型的に見られた価値観(例:「死ぬのは怖くない……」)を,メタ化しコメディ化することで,骨抜きにしているようにも思えます。「努力と根性」であるとか,「無様なまま生き続けるよりは死を選ぶ」とかいった,旧世代的な価値観は,それはそれで文化なり政治なりの推進力になっていたんだと思います。しかし,こうした価値観のために,主体的な個人の選択が収奪されてきたのも事実だと思っていたりして。そうした視点で見ると,本作は旧世代的な価値観を少しだけ相対化することで,「もちっと力を抜いてもいいんでねいかい?」とか「あきらめるのは早いんでねいかい?」と語りかけているようにも思います。

まぁ,三谷節なので,面倒くさい理屈をこねなくても,純粋にコメディとして楽しめるのは,もちろん折り紙付き。おすすめです。

Trackback
Trackback URL:
Ads
About
Search This Site
Ads
Categories
Recent Entries
Log Archive
Syndicate This Site
Info.
クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
Movable Type 3.36
Valid XHTML 1.1!
Valid CSS!
ブログタイムズ

© 2003-2012 AIAN