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本日のネットつらつら - はてなの人のリーガルリテラシーと円環の外側

2008年06月17日

soulwarden さんのコメントを読ませてもらって,笑わせてもらいました。まぁ,そうなんだろうな,と。

あかさたなさん、はてな村の皆さん。 はてな村っていうのは、法律には実定法にも法理学にも疎い人が多く、こんなに論理の抜けがあるのに、誰も指摘しないナイス集合知なところです。

Commented by soulwarden at 2008-06-15 12:08

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例えば,経済の場合,経済合理的な意思決定なり,その意思に忠実な経済合理的なアクターなりが活動すると,経済合理的な均衡点がどこかに生まれます。これはなんでかというと,なんでもない,そうなるように議論を進めているから。ある意味,こういう話は(比喩的にも)トートロジーなわけで,閉じた円環をぐるぐる回っているだけだったりします。「赤いりんごは赤い」とか言ってるのとあまり変わらんわけです。もっとも,これ自体は,どういう議論もそういうもんなので,あまり問題はありません。

この点で,小飼さんの議論は,ある円環をぐるっと回ってみせたわけですけれど,実際のところ,円環はそれだけではない。政策論なり法理学(法哲学)なり実定法学なりの話では,他にもたくさんの似たような(あるいは正反対の)円環があったりします。一方,世界なり人間の一生なりってのはひとつしかありませんから,論理的に考えると,これらと整合性をとるなり,政治的に争うなりといった形で,解決を模索しなくちゃいけません。つまるところ,モノを言うなら,教養程度に知っていてしかるべき議論もある,と。

で,こういう話。質問そのものは,あたしも気になるところです。

最近、ネットでの犯罪予告による逮捕者が出ています。
「明日正午、渋谷の交差点にステルス爆撃機を墜落させて100万人殺す。」などと現実にはありえない荒唐無稽な予告であれば逮捕されることはないと思われますが、「明日渋谷ハチ公交差点にトラックでつっこむ。100人殺すでー。」だと逮捕される気がします。

どのあたりに逮捕される/されないのラインがあるのでしょうか。
逮捕されないギリギリセーフな予告と、逮捕されちゃうギリギリアウトな予告の例を挙げて説明して下さい。

くれぐれも、本当の犯罪予告をしないよう、ご注意の上ご回答下さい。

最近、ネットでの犯罪予告による逮捕者が出ています。[...] - 人力検索はてな

気になるのは,この質問に対する回答について,根拠がまったく示されていないことです。これだけの反応がありながら,誰も既存の議論を参照していない。自分でモノを考えるのはいいことですけれど,既にある議論は,出してもらいたいものです。

はてなQでは,「荒唐無稽な予告」でしょっ引かれることがあるか,という話でした。逮捕されるかどうかは,犯罪性があるか,の他にも色々な要因があるので(逃亡・証拠隠滅のおそれがあるとか),どこまでいったら特定の構成要件に該当するか,で考えてみます。ここでは,威力業務妨害罪に該当しうるとして,『新版 刑法講義 各論(追補版)』(大谷實,成分堂)の「業務に対する罪」の章には,次のような話があります。

まず,「妨害」の意味。

妨害行為は、単に業務の執行自体を妨害することだけでなく、広く業務の運営を阻害する一切の行為を含む(大判昭八・四・一二刑集一二・四一三)。現実に「妨害したこと」を要するかについて、判例は、本罪を具体的危険犯と解し、業務の安全を保護するという見地から、妨害の結果を発生させるおそれのある行為で足りるとしている。

『新版 刑法講義 各論(追補版)』(大谷實,成分堂,pp143-144)

続いて,「威力」の意味。

威力を用いるとは、人の意思を制圧するに足りる勢力を示すことをいう(最判昭二八・一・三〇刑集七・一・一二八〔役員室に侵入して団体交渉を強要〕)。威力は、必ずしも直接現に業務に従事している他人に対して行使されることを要しない([引用略])。暴行・脅迫を用いるだけでなく、社会的な地位や経済的優越による権勢を利用する場合も含まれる([引用略])。

※強調は aian。

『新版 刑法講義 各論(追補版)』(大谷實,成分堂,p145)

ちょっと長めに引用しちゃったけれども,結局のところ,「人の意思を制圧するに足りる勢力を示しているか」が,「威力を用い」たかを判断するためのメルクマールになるそうです。リアリティ云々というのは直接の基準ではなくて,あくまでも「人の意思を制圧する勢力か」が問題になる。なぜなら,業務妨害の罪が,自由に対する罪であり私生活の平穏に対する罪だから。

じゃあ,「意思を制圧する」ってどういう意味だよ,とか,制圧しているかは誰が判断するんだよ,とかいった話は,当然疑問になるわけですけれど。これは,専門的な話として,エラめな先生から教えてもらうなり議論するなりすることになりそうです。

ともかく,この話,別にマイナーな下級審裁判例でもないし,刑集(最高裁判所刑事判例集)にも載っている話だったりします。ちょっとぐぐれば,わざわざ本なんか見なくたってあちこちに最高裁の見解が載っています。それなのに,誰も指摘しないし参照しない。

集合知というのは,既存の知識や専門知識には案外もろくて,「どっちがよさげか」みたいな一般的な価値判断にしか通用しねいんではないか,とつらつら。ナイスな集合知では,円環の外を見ることはできないか。

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