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今日読んだ本 - 『ケータイ小説的。』

2008年08月07日

昼に買って,帰りの電車で読みました。このサイトの Wishlist に載せておいたら,異常にクリック数が多かったから選んでみたという……(1冊も売れてないけど)。表紙の効果おそるべし。

ケータイ小説的。――“再ヤンキー化”時代の少女たち
速水健朗
原書房
売り上げランキング: 396
おすすめ度の平均: 5.0
5 久々にセンス・オブ・ワンダーを味わった
5 間違い無く楽しめる!
5 ケータイ小説を読む人・書く人の姿が見えてくる

ケータイ小説というと,有名な『恋空』くらいしかロクに読んでないんですけど,たしかに流行ってます。流行っている向きには。で,その背景にはどんなもんがあるんでしょうね,という本です。

具体的には,ケータイ小説を「浜崎あゆみ」「再ヤンキー化」「郊外論」「コミュニケーション論」の側面から,その背景を探るもの。コミュニケーション論(第4章)あたりは,AC(アダルトチルドレン)に解消しちゃったもんで,議論が既定路線に乗っかっちゃった感じもするんですけど,総じてあたしが感じていることと乖離がなかった感じがします。あ,「AC」の「既定路線」ってのは,この言葉がそれ自体,(ネガティブな)現代コミュニケーション論の受け皿になっていると思うってことです。現代のコミュニケーションをネガティブに語るなら,AC って言っとけみたいな。

特にあたしの感覚と近かったのは,ケータイ小説のモチーフが,ジェンダー的な視点から見て非常に保守的だってこと。女性の社会進出とか,家父長的な社会権力に対するアンチ,みたいなテーマはこれっぽっちもなくて,真実の愛でもって「一つにな」って,できた子供と地元で幸せな家庭を築くのがサイコー,みたいな決まった価値観があると思うんですね。これは,レディース(死語)的な嗜好にとてもよく合う。「ヤンキー化」と著者が称するのは,当たってるなぁ……と。

また,ヤンキー的トライブのレコンキスタとして,浜崎あゆみが旗手として機能したという指摘も当たっていると思います。本人がヤンキーだったってな話はともあれ,解釈の余地を最小限絞った(本文にいわゆる「情景のない」)表現は,特定の価値(観)を脳髄に押し込むのに効果的ですから。この点で,相田みつをが出てきたのには,笑わせてもらいましたけど(たしかにそうだ)。

で,問題なのは,なんで浜崎に対抗するものとしての「アムラー的価値」から,浜崎のヤンキー的価値に嗜好が転換したのかということです。ここら辺について,本書はちと詰まってない感じがしています。

アムラー的な価値については,どうしても宮台氏をあげないといけないと思うわけで,実際,本書でもあげられているんですけれど,本書では両者の違いをなぞっただけ。『終わりなき日常を生きろ』において,宮台氏は,大文字の他者(大きな物語)の退潮とともに現れた,現代社会を批判して,コギャルの「まったり革命」を叫んでいたのでした。

終わりなき日常を生きろ―オウム完全克服マニュアル (ちくま文庫)
宮台 真司
筑摩書房
売り上げランキング: 93243
おすすめ度の平均: 4.5
3 肝心なのは受け止めること
5 茶髪は「脱力」
5 素晴らしくきつい本
5 終わりなき日常とは
4 宮台の代表作!

『終わりなき…』でも触れられているんですけど,コギャル的な生き方としての「まったり革命」というのは,まったりという言葉とは裏腹に,かなりのコミュニケーション能力を要します。で,そういうのが不得手な連中は,自己啓発セミナーなりオウムなりに回収されるしかない……みたいなのが,本書の文脈(だった気がする)。

これはあたしが思うことなんですけど,浜崎のヤンキー的価値に嗜好が転換したのは,おそらく,そうした流動的でコミュニケーション過多な状況から退却する,あるいは,特定のそこそこ大きな物語に依拠する方向に転換したからなんじゃないかと思うんですね。もう疲れちゃったよ……ってな感じで。

んでもって,このことはケータイ小説だけに言えることではなくて,世代的にもジェンダー的にも,あちこちで言えるんじゃないかと思います。単純に保守化するというもんでもなくて,とにもかくにも寄る辺を求めている感じ。その意味で言えば,少し前に流行った『品格本』なんかは,ケータイ小説的価値と非常に親和性が高い。

本書については,作品のモチーフのほかに,受け手の動向分析もあって興味深いんですけど,それはまた別の機会に。

一方,ケータイ小説とある意味で対をなしている小説に,ネット小説ってのもあります。中でも,あたしがここ1年くらいちょくちょく見てる「短編」掲載の小説は,ケータイ小説とはちと毛色が違う感じ。この辺についても,また別の機会に……。

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