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今日読んだ本 - 『時計じかけのオレンジ 完全版』

2008年09月28日

この前紹介した『時計じかけのオレンジ 完全版』を読みました。

時計じかけのオレンジ 完全版 (ハヤカワepi文庫 ハ 1-1) (ハヤカワepi文庫 ハ 1-1)
アントニイ・バージェス
早川書房
売り上げランキング: 3818

この前紹介したとき,本作は映画(監督:スタンリー・キューブリック)が原作とか書いちゃったんですけど,まったく勘違いしてました。原作がこっちで,映画は本作の完全版でないものを,さらに脚色したものなんだそうな。原作は本書のバージェスです。

で,本書にいわゆる「完全版」なんですけれど,これ,単純に省略されたエピソードが復活しているとか,形式的に修正/削除された文が戻っているといった類のもんではありません。あとがきを読んで知ったんですけれど,キューブリックの『時計じかけのオレンジ』と,バージェスのそれとは,まったくストーリーが異なります。簡単に言ってしまうと,キューブリックのそれがバッドエンドなのに対して,バージェスのそれはややハッピーエンドに近い(完全なハッピーエンドでもない)。

これは好みが分かれると思うんですけど,あたしゃ個人的には,キューブリックのバッドエンドの方が良かったんじゃないかと思います。バージェスのハッピーエンドは,つまるところ,子供が大人になることで,将来への希望を示すもの。しかし,「ルドビコ法」といった特異な設定/演出を,「子供から大人へ」といったモチーフに解消するってのには,どうにもムリクリ感が漂うし,それまで比較的大きな社会的・倫理的問題として暴力を扱っていたのに,若者なるモチーフを持ち込んだがために,暴力が一過性の「はしか」のようなものとして扱われちゃってる感じもするからです。また,それまであった「自由意志と善悪」の問題が宙吊りにされてしまっている感じもする。

しかも,バージェスのハッピーエンド,つまり「子供から大人へ」といった問題は,かなりの程度倫理的な要素を孕むもので,それもカソリック的な倫理観に下支えられている。ここら辺の感覚は,カソリックでないあたしにとって,なかなか理解できなかったりします。

まぁ,キューブリックのバッドエンドも,それはそれで寓話の世界にとどまっちゃう感じは否めないわけで,判断が難しいんだとは思います。完全版とそうでない版は簡単に区別できるので,比べて何度か読んでみるのもいいかもしれません。

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