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部下の病気を疑う前に疑うこといろいろ

2008年12月06日

【1498】曖昧な対人関係を理解できずトラブルを繰り返す部下は病気でしょうか」に対するはてブの評価が,一部「部下思いの上司の質問」ってな扱いになっているのに,ものすごい違和感が。

この上司,たしかに部下を「よく見ている」けれど,「病気かどうか」を質問しているだけなわけで,どういう意図で質問しているのかはよく分からない。病気という診断があったら,Aさんはどうなるのだろうか。病気だからしょうがないとなるのだろうか。退職と通院(?)を勧めるのだろうか。反対に,病気じゃないという診断になったらどうなるのだろう。病気じゃなくてよかった……とかじゃ済まないだろう。

nekora 御仏のような上司だな。私もこういう超馬鹿な我侭者に当たった事あるが今思い出すだに腹立たしい。容赦無く仕事振ってたら休みがちになって辞めたけど。 2008/12/05

はてなブックマーク - 【1498】曖昧な対人関係を理解できずトラブルを繰り返す部下は病気でしょうか

おそらく,ベクトルはいつだって nekora 氏の元部下がたどる方向に向いている。ま,nekora 氏の話は端的に,権限を傘にしたイジメというんだろうけど,精神医学を持ち出す場合も大して変わらない。アプローチがややソフト(で科学的)になるだけで,この部下がたどる道は一緒です(きっと)。

はてブを見ていると,nekora 氏に限らず「うちにもそういう覚えが」みたいな反応があるけれども,安心して欲しい。あなたのそれは,「誤診」と考えてまず間違いない。大体「普通に」考えて,コミュニケーション不全の問題で,部下の「病気」をまずもって疑うのは,上司のとるべき態度としておかしい。その前にもっと疑うことがあるだろう。上のケースは,発達障害の事例として典型的だけれども(その分脚色されている可能性が高いとも疑っている),あなたが部下について「普通じゃない」と考えるとき,「病気」を疑う前に,例えば次のようなことに心当たりがないか考えてもらいたい。

  • 例えば上記リンク先の会社は,中規模会社ということだけれども,こういう会社は人的な要素が強い場合が多く,一般的な企業運営の視点からすると独特の風習があったりする。課の規模が15名程度なら,作業の進め方などが書面化されていない(なし崩し的に決まっている)こともある。こうした風習を「社会常識」または「普通の人の感覚」として,中途採用の人間に課していることはないか。
  • 上司の指示が,ダブルスタンダードを示していることはないか。部下がコンピュータのように動かなくてはならない(自律的に動けない)場合は,部下の人格障害以前に,上司の気まぐれなオペレーションに問題がある場合もあり,それが大半だったりもする。部下の意見や疑問を吸い上げる仕組みなり雰囲気はあるか。
  • また上記に関連して,特定の作業成果を部下に適切にフィードバックしているか。特定の作業成果が「正しかった」か「間違っていた」かをフィードバックしなければ,部下は適切にロールモデルを形成できない。結果その部下は,「いつまでたっても仕事を覚えられない人」と評価されるわけだけれども,その前に「覚えるべき仕事」を適切に示していなければ,いつまでたっても状況は変わらない。
  • 上司が学歴的にルサンチマンを抱えていることはないか。「普通の人」という言葉を,単なる「一般人」という意味ではなく,高学歴者を「普通じゃない人」として逆差別する意味で使っている側面はないか。また,それを恣意的に,病理または高学歴者に対するステレオタイプ(頭は良いけど実践には不向きとか)と結び付けている側面はないか。

そういえば,一番最後の例について,先日高学歴の友人(というのも変なんだが)と話していたんですけれど,彼曰く「あの会社に受け入れてもらうためには,俺は会社の中で一番馬鹿にならないといけない」とか言っていたのを思い出します。一番馬鹿になって,はじめて「一般人」として受け入れられる,とかなんとか。学歴的にルサンチマンを抱えている人は,高学歴者と面と向かうとものすごく分厚い壁を作るもんで,そゆ空気は本人からも読み取れてしまう(そっちの方が精神医学的にアレだと思うんだけど)。下手すると病人扱いされかねないわけで,高学歴者さんはそゆとこに近寄らない方がいいですね。

個人的に,コミュニケーション不全の問題を,安易に精神医学的な文脈に落とし込むことについて,あたしゃ危険を感じています。いや,自分の身の危険としてではなく,社会文化的な風潮として。こゆもんは,大抵権力的に作用するわけで,病気として名指された人はその言説から逃れるすべがない。アルテマウェポンだと思う。アルテマウェポンである精神医学用語は,(少なくとも専門外の人間にとって)根拠のあいまいな攻撃材料になるわけで,反駁することができません。ま,だからこそ,アルテマウェポンになるんだろうけれど。

で,そういう伝家の宝刀をやすやすと抜く人(いい加減な「診断」をつける人)ってのは,高い権限を持ってはいるものの,(例えば会社であれば)マネジメント能力の点からして無能だと思ったりもします。伝家の宝刀を抜けば,会社も傷つくことについて,あまりにも無自覚だから。むしろ,そっちの方が病的とすら思う。

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