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刑事司法に対する一般的な認識ってのはこういうもんなんだろうな,と思う

2009年03月19日

finalvent さん経由でこちらのお話。最近こんな話ばっかだけど。

コイツは罪を犯しているなと検察官が思料して裁判所に逮捕状を請求し、裁判官も検察官の疑いを尤もだと認めることによって初めて逮捕状が出されるのが我が国の司法です。

(snip)

従って「いつ首相は裁判官になったのか」やら「刑事裁判の大原則に反する」とかなどと言う訳の分らない非難こそ、司法のことが全く理解できていない証左であり、まあこんな人たちだからこそ小沢氏の主張を真に受けて擁護しているのかもしれません。

さるさる日記 - 泥酔論説委員の日経の読み方

多分,刑事司法に対する一般的な認識ってのは,こういうもんなんだろうな,と思う。「裁判所が逮捕令状発布の判断にかんでいるから,行政府が『明らかに違法』と言ってもいい」ってんだったら,逮捕や裁判なんてまどろっこしいことする必要はないわけで,さっさと刑罰なり何なりを執行しちゃえばいいじゃんよ,という話になってしまうんじゃないだろうか。しかし,これは明らかに間違っている。

というのも,裁判所が逮捕令状を発付する際に判断することは,違法/適法の実体判断ではないから。刑訴法199条2項は,逮捕令状を発布するには嫌疑の相当性(罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由)と逮捕の必要性(罪証隠滅,逃亡,自傷他害のおそれがあるなど。「明らかに逮捕の必要がないと認めるとき」の反対解釈)が必要ですよ,と読みます。

裁判官は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があると認めるときは、検察官又は司法警察員(警察官たる司法警察員については、国家公安委員会又は都道府県公安委員会が指定する警部以上の者に限る。以下本条において同じ。)の請求により、前項の逮捕状を発する。但し、明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、この限りでない。

刑事訴訟法 第二編 第一審

この点で,逮捕要件の「相当性」は,実体判断である違法/適法の判断も含んでるじゃないか,という話もありそうです。けれども,これが間違っていることは,逮捕令状発布の手続に必要な証明の程度が疎明資料に基づく相当性で足りることからも分かる。日本の刑事裁判で有罪判決を言い渡すには,証拠裁判主義(刑訴法317条)に基づく厳格な証明を経る必要があります。

一方,疎明っつのは要するに「なんか違法っぽい」くらいの嫌疑なわけで,これだけの資料(証拠ではない)では,行政府はもちろん裁判所すら有罪(の事実)を認定することはできません。また,逮捕令状っつもんは,被疑者や弁護人の言い分なんかとは関係なしに,(悪い言い方で言えば)密室で発布される(勾留(延長)請求では被疑者の言い分も聞いてもらえるけど)。こんな手続でもって,捜査機関も含む行政府の長が「違法」と言えるのだとしたら,適正手続(憲法31条)もへったくれもない。この点が,麻生発言の問題点だったりする。

司法のことが全く理解できていない証左……。

刑事司法には関係者間に様々な対立構造があるわけですけれど,もっとも基本的な対立構造は,被告人(被疑者)と捜査機関の対立だといっていいんだと思います。そしてこの対立は一般市民と捜査機関の対立にも敷衍することができる。刑事司法周りの話を政治的な文脈に乗っける場合,こうした弾劾構造を踏まえなくちゃいけないわけだけれども,色々な正義「感」が交錯しているようで,なんだかゴニョゴニョだなと思う。

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