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昨日読んでた本 - 『クラウドの衝撃』

2009年05月18日

本屋で目にとまったので読んでみました。横文字キラキラ。

クラウドの衝撃――IT史上最大の創造的破壊が始まった
クラウドの衝撃
posted with amazlet at 09.05.18
野村総合研究所 城田 真琴
東洋経済新報社
売り上げランキング: 447
おすすめ度の平均: 4.0
5 デファクトスタンダードになるのかも
4 ■最新の業界動向に短時間でキャッチアップできます!
5 世の中が変わるかもしれませんね
4 わかりやすいです
4 初心者の視点から

クラウドコンピューティングなる言葉は,もう随分浸透した感もあるんですけれど,実際この言葉が何を指しているのかは,必ずしもはっきりしていなかったかりします。んなもんで,こゆのは話半分に聞いておくのがいい。話す相手のいる経営者さんや,丸め込む相手のいるコンサルさんは使いこなせるようにしといた方がいいんでしょうけど。このサイトの書評を読んでる方は,うっすら感じているとは思うんですけれど,あたしゃこの手の本にはめっぽう冷たいです。

本書は,最近流行りの「クラウドコンピューティング」について説明した本。内容的には少し古くなってるとは思うんですけれど,おおまかな話を知る分には,本書を読めば十分だと思います。

じゃ,クラウドコンピューティングとは何かというと,ちょっとコンピュータをいぢってる向きには,なんのことはない話で,あなたが使ってるそのコンピュータ環境(Gmail とか Google Apps とか)にちと毛がが生えたような環境のことを言っています。つまり,コンピュータの機能(メールの閲覧環境やオフィス文書の作成環境)をローカルにも自前のサーバにも置かないで,Google や Amazon のような大っきめのところで,一括して提供する仕組みのことをいいます。

一方,開発者向けには,もう少し意味があって,開発環境(Platform)やハードウェア環境を提供することも指しているらしい。Gmail のようにアプリケーション機能をサービスとして提供することを SaaS,プラットフォームやハードウェア環境をサービスとして提供することを,それぞれ PaaS,HaaS と言うそうです。ま,この言葉や説明をそのまま覚えててもあまり意味ないんですが。

で,それじゃ本書に言う「クラウドの衝撃」というのが,何に対する衝撃かというと,ユーザに対するそれではなくて,要するに,今までお客さんのローカル環境にライセンス売りしていた(大部分の)ベンダが衝撃を受けるってことなんですね。分かりやすく言えば,SaaS な GMail があれば,誰も Outlook は使わないよね。Microsoft 困ったね,という話です。もっとも,こゆ環境の変化は,もう数年前からあって,業界にいる人はもちろん,コンピュータが好きな人だったら,少なからず感じていたはずの話だったりします。

つことで,ソフトウェア開発業界にいる人間(あたし)としては,ユーザの利用環境より「これからも仕事があるのか?」といったところが気になるところ。本書の感想として,ここら辺の予測を立ててみようと思います。

まず,Google にしても Amazon にしても,圧倒的なインフラ環境を利用してサービスを提供することをウリにしていることから,インフラ系 SIer は,かなり食われるんだと思う。これは本書でも言われている通り。個人的には,クラウドなる話の優位性は,ネット上でサービスを提供する SaaS 云々よりも,Google 等々が,ネットワークを中心としたインフラを自前で(公的機関の戦略よりも先んじて)整備しちゃったところにあるんだと思っています。つことで,その役割を受け持っていたインフラ系の事業者,つまり,サーバを売って一緒にミドルウェアやらアプリケーションやらの「そりゅーしょん」を売っていた人たちは,ほとんど死活問題になるんだと思う。

ただ,基本はそうなんですけれど,この動きも日本においては少し事情が和らぐんじゃないかとも思っていたりする。特に,製造系のインフラ SIer は,しばらく SaaS の影響を受けないんじゃないだろうか。というのも,日本の製造業はやや特殊なシステム環境にあって,大抵自前でシステムを内作ないし外注しているからです。製造系システムは,今までも SAP のような ERP パッケージにするか,内作ないし外注にまわすかといったところで選択肢があったわけですけれど,あたしが知る限り(大した経験じゃないけれど)かなりの程度自前のシステム構築にこだわるところがある。これまで内作したシステムを使っていたけれど,外資に買収されたとたんに SAP 導入なんてことも珍しくありません。SaaS なり PaaS なりがコストパフォーマンスの点で有利だとしても,日本製造業の自前システム主義は,(ソフトウェア開発者の立場からしてみると)ほとんど意地に近い感じすらするわけで,こゆ文化的背景はコストだけで切り崩すことはできないんじゃないか,と思ったりします。

そんなもんで,こゆ製造業が頑張ってる限り,しばらくは「サーバが売れない」なんてことはないし,製造業系のシステム構築案件が極端に減ることもないんだと思う。ま,どちみちジリ貧ですが。

一方,ソフトウェア開発に目を移すと,これは大きく2つに分かれるんだと思う。

ひとつは,PaaS なり HaaS なりの上で動くアプリケーションを受託で作る(ないしカスタマイズする)方面と,もうひとつは,HaaS なりのサービスをインフラ屋さんのサービスとして利用しつつ,サービスプロバイダとして進む方向です。

前者は言うまでもなく労働集約型の「機械作業的な」開発です。ここで使われるであろう Python や PHP は,学習曲線が急なので,多分だれでもできるはず。そこに疎外を感じるかは(略)。ともあれ,これまでの業務アプリの受託業務は,こっちの方面に収斂していくんだと思います。

一方,後者は,特にミドルウェアやソフトウェアエンジンを持ってるような企業の話です。例えば,電車の経路探索エンジンや画像処理エンジンを持ってる会社なんかは,自社サーバ製品の一部を公開することで収益を上げることができるかもしれない。こゆのは少なからず負荷がかかる処理になるので,これまで小さめのベンダは自前のサーバでサービスを提供することはできなかったけれども,HaaS のインフラ屋さんを使えば軽くできちゃいます。廉価版の機能をネットで提供することで,これまで世間にアピールできなかった機能をアピールしつつ,本製品をサーバライセンス付きで今まで通り売る,なんて戦略もあるはずです。サービスそれ自体が広告になりますしね。ただ,当然のことながら,これも自前でサービスを提供できるだけの強み(コアコンピタンスとかいうのか?)を持ってることが大前提なわけで,そゆのの醸成に投資しないままあぐらをかいてたようなとこは,生き残れないんだと思います。

強いてもうひとつ方向性があるとしたら,ネットベンチャー系なんでしょうけど,これはね……。頑張ってください。

あと,クラウドの影響をあまり受けないであろうソフトウェア業界としては,ローカルのハードウェアを動かすソフトウェアベンダがあるんだと思います。ほとんどが法人相手じゃないだろうからアレなんだけれども,セキュリティ関連のソフトウェアとか DVD の閲覧ソフトとか売ってるようなとこは,クラウドで得することはあっても損することはないのだと思う。クラウドはどんなに頑張っても個別的で具体的なハードウェアを持てないからです。こゆのはクラウド勝ち組なんだろうな……きっと。

ま,好き勝手言ってみたけれど,そんな感じ。とりあえず,インフラ系 SIer はやばいぞ,と。

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