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今日読んだ本 - 『含羞都市へ』

2009年08月16日

古本屋で買った本で,かなり前に読んだんですけれど,14日の夜に放送していた NHK の番組を見て思い出したので,もう一度読んでます。

含羞都市(がんしゅうとし)へ (のじぎく文庫)
木津川 計
神戸新聞出版センター
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見ていた NHK の番組ってのは,大阪府民の府民性を自虐的に紹介したもので(大阪放送局の製作らしい。参照:在阪マスコミの自虐報道スレ),要するに「大阪人はせっかちで周りに迷惑をかけてばかり」な話を裁判調で扱う番組だったのでした。NHK のサイトで番組表を見たんだけれど,放送された形跡が無い……。どこにいったんだろう。あくまでも,これは差別や偏見の問題だと思うんだけれども,今回の番組は大阪放送局が自前で作ってるってんだから,よくわからない。

大阪人のイメージというと,例えば「どケチ」とか「ど根性」とか「恥知らず」とかいった悪いイメージがあったりします。会津の人間は閉鎖的だ(白虎隊の関係で)とか,あたしの地元で言うと,ハマっ子は新し物好きでお洒落だがスカしてる(港町の関係で),とかいった話もある。しかし,いうまでもなく,そゆイメージ通りの人間は実際にはいないわけで,血液型性格診断よろしく醸成されたステレオタイプだったりする。あたしも含めて,ダサいハマっ子だって横浜にはいるわけで(いばれないが)。

ただ,大阪や大阪人のイメージは,傍から見る限りものすごく悪い。本書は1986年に刊行されいて,この時代はちょうどグリコ・森永事件の最中だったわけですけれど,この事件も大阪のイメージを低下させる要因になっていました。最近の事件では,附属池田小事件も当てはまると思う。

しかし,本書が問題としているのは,こうした事件が他の都道府県でも起こりうることで,実際に起こっているにもかかわらず,どうして大阪で事件が起きたときだけ「大阪らしい」といった評価になってしまうのか,ということです。この点で,著者は,都市の「文化的グレード」が脆弱だから,と指摘する。神戸で山口会系の暴力団が権勢をふるっていても,犯罪の町ではなく恋の町として扱われるのは,ひとえに「文化的グレード」のためだ,と。

もちろん,大阪に文化がないかというと,そんなはずはありません。人間も,あたしが知っている人に関する限り,イメージとは程遠い。この点で,本書では,大阪の文化を以下の三点にまとめています。

  • 宝塚型文化 ―― 都市的華麗
  • 河内型文化 ―― 土着的庶民文化
  • 船場型文化 ―― 伝統的大阪らしさ

そして,大阪のイメージの悪さは,上の河内型文化(のうちさらに一部)だけを強調した一面的な見方だと説きます。特に,作家の今東光が描いた河内シリーズが,アナーキーで猥雑な大阪像を助長してしまったとする。あたしゃ今東光の作品を読んだことがないので,なんとも言えないんですけれど,筆者に曰く,「一人のボヘミアンがふらりとやってきた大阪で、文学による文化のテロルを加えた」出来事だったらしい。そして,このステレオタイプは,先の NHK 番組をはじめとした媒体を通じて全国に喧伝され,時間を経るごとに増幅されることになる。

他方で,本書では,現代の大阪が古くから持っていた町人文化を壊すことで,都市のグレードを下げていることも指摘しています。本来町人文化は,何よりも人の信用を本義とするもので,「がめつい」利潤一辺倒の態度をあらわすもんじゃない。しかし,明治期以降鼓舞された立身出世主義の舞台が大阪であったために,現代の大阪は拝金主義のセコい町といった印象が植え付けられてしまった。実際,大阪を地元とする人にも浸透してしまっている(としている)。本書のタイトルにいわゆる「含羞」というのは,「はにかみ」ということで,つまりは「文化」ということのだそうだけれども,結局本書は,文化的な素地があるにもかかわらずそれを見直すことができない環境にある大阪を指摘したのでした。これは今でも当たっていると思う。

先の NHK の話に戻ると,バイキングの料理をタッパに詰める行為について「それを家族・知人で分けて美味しいとなればもっと客がくるから,結局商売を考えているんだ」みたいな屁理屈をこねている出演者がいました。こゆ文字通りの「がめつさ」や「あつかましさ」は明治期以降のイメージに自ら染まってしまった大阪人だと思うし,それでもって迷惑している大阪人も多くいるはず。仮にヤラセだったとしたら,もっとひどい(ヤラセだろうが)。

一方,本書は,もっぱら外部的な要因で大阪のイメージが低下したことを強調しているきらいがあるんですけれど,おそらく内部的な要因もあったはず。例えば,大阪出身の芸人が,自虐芸として地元の猥雑さを強調しているところもあるのだと思う。地元でやる芸だったら,自虐芸として受け入れられるんだろうけれども,他県の人間には真に受けてしまう人もいるはず。例の番組についてもしかり。

ともあれ,先日の番組は,個人的にひどいと思った。本の話じゃなくなっちゃったけれども,そんな感じ。

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