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石田衣良氏の草食男子観は的確だと思った

2009年09月08日

なんつかえらく古い話になってしまったんだけれども,今朝の朝日朝刊にあった author's cafe という全面広告記事が面白かったのでメモ。石田衣良氏が「草食男子は経済成長の夢を見るか」という話を寄せています。印刷物しかないので,少し長めに引用します。

そこで反省がひとつ。この頃の日本では草食男子が話題で、ぼくもあちこちで散々悪口をいってきた。けれど恋愛や結婚には消極的で、スポーツカーなどは見向きもせず、海外への関心が薄い草食男子のライフスタイルは、高効率で低環境負荷な次世代型の標準なのではないか。あるときから、そんな疑問をもつようになったのである。仏陀の昔から世界は思うようにならない苦界で、それに合わせて自分の欲望を縮減させるのが悟りへの道だと考えられてきた。わが低成長ニッポンの草食男子は、もしかしたら仏様のお弟子としても、ポスト・リーマン・ショックの人類としても、最高の境地にあるのかもしれない。

ただし、草食男子の欲望抑制型ライフスタイルは、これまでの資本主義には馴染まないところがあるのも事実だ。人は放っておいても新たな豊かさの段階を目指し、懸命に労働蓄財する。ホモ・エコノミクスの存在が経済成長第一主義の前提になっているからだ。マンガやアニメのような青春文化を強制的に現実世界に接続するオタクのライフスタイルは、すでに世界の先進国で一般的になった。このまま草食男子が世界中を席巻するとき(すでにその兆候は見えている)、世界と資本主義はどんな風に形を変えるのか。草食男子もまた経済成長の夢を見るのか。

「草食男子は経済成長の夢を見るか」(石田衣良,朝日新聞2009年9月8日付,10面)

石田氏は1960年生まれとのことなので,あたしより17歳も年上。一方で,あたしゃどういうわけか,この頃周りから草食男子扱いされているんですけれど,そのあたしの感覚からすると,おそらく石田氏は,この年代で「草食男子」なるものを的確に捉えている,数少ない人なんじゃないかと思います。引用が皮肉でないのだとすれば,の話だけれども(皮肉だとしてもベタに乗っかる)。

草食男子というと,「(現実の)女性との関係で消極的な男性」みたいな点が強調されるけれども,仮にあたしやその周りの人間を草食男子というのだとするならば,それは正しくない。それは例えば,金をたくさん稼いで,うまいものを食って,うまい酒を飲んで,いい車に乗って,広い家に住んで,いい女を抱いて……みたいなアレコレを「燃費の悪い前時代的な欲望」として捉える視座なんじゃないだろうか。そしてそれは,反対側から見て「降りる自由」とも表現されている。

1970年代後半生まれの人間は,小中学生の頃にバブル景気があったのをちら見していたわけだけれども,景気を実感する年代になってからは,低成長が当たり前になっていたのでした。おそらく1980年代以降に生まれた人は,記憶にすらないんだと思う。あまり世代論にはしたくないんだけれども,周りの人間しかりブロガーさんしかり,あたしくらいの年代を皮切りとして,欲望に関する決定的なギャップがあることはひしひしと感じます。もちろん,みんながみんな当てはまるわけじゃないんですが。

草食男子かは分からないけれども,例えばオタク的な文脈で言うなら,そう呼ばれる人たちは「マンガやアニメのような青春文化を強制的に現実世界に接続する」ことで,現実世界とは異質の価値観や世界観を現実世界に導入するだけでなく,現実世界そのものをマンガやアニメの世界に投影することで,別のリアリティの中を生きる術を知っているし,少なくともそれを模索しているのだと思う。ネットやマンガ/アニメの媒体が手軽に流通するようになってからは,その動きも加速している。

ま,こういうことを口に出して言うのは,かなり野暮なことだったりもするんですけどね。上の年代の人には,口で言わなきゃ分からないんでねいか,と思うこともあったりする。

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