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「初心不可忘」の意味について

2010年04月12日

高校の国語で習ったと思うけれども,「初心不可忘」つのは,世阿弥の『風姿花伝』や『花鏡』で言われていること。「初心忘るなかれ」とか言ってるとこもあるけれど,こゆ風には書き下せません。正しくは,「初心忘るべからず」。

それはともかくこの言葉,一般的には「何かを始めたときの新鮮な気持ちや意気込みを忘れちゃいけませんよ」という意味で使われています。始めた当初は無垢で新鮮な状態。業界に染まって汚れることなく,当初の新鮮な気持ちを忘れちゃいけませんよ……とか云々。ま,それはそれで,教訓にはなるんだと思います。ただこの言葉,ほんとはそゆ意味ではないんですね。

で,さらに言うとこの言葉,ネットでは「若くてヘタな頃に経験した屈辱を忘れずに向上心を持ってなさいよ」という訳が当てられている。これは本当なんだろうか。『風姿花伝』から,もうちと具体的なところを引用しておきます。読みにくいと困るので,書き下したもの。

初心よりの以来の、芸能の品々を忘れずして、その時々・用々に従つてとりいだすべし。若くては年寄の風体、年寄りては、盛りの風体を残すこと、めづらしきにあらずや。しかれば、芸能の位上がれば、過ぎし風体をし捨てし捨て忘るること、ひたすら花の種を失ふなるべし。その時々にありし花のままにて、種なければ、手折る枝の花のごとし。種あらば、年々時々のころになどか逢はざらん。ただかへすがへす、初心を忘るべからず。

『風姿花伝』(世阿弥)

要するにですね,ある芸を身に付けたらその種(その芸の核心みたいなもの)を忘れずに取っておきなさいということなんでねいかな。花の種は,後々に取り出してまた再現することができる。こうしたものを積み重ねることで,芸能の格も上がっていく,と。

したがって,「初心」というのは,新入生とか新入社員とかいった意味ではなくて,新しいことを学んだり経験したりしたその時点に,その度ごとに生じている。それをそのときだけの花にしないで,洗練された経験(種)として残しておくことが大切なんですよ,とか云々。

春なのか,なんだか「初心忘るべからず」と言っている方が多かったので,調べてみただけ。新入生さんや新入社員さんは,まだ何も学んでないんだから,初心もへったくれもないわけなんだけど。

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