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大阪地検の証拠隠滅事件雑感

2010年09月26日

法律の話ばかりが続いているけれども,世も末的な話なので少し書いておきます。

今回の話は,検察が証拠物を改ざんするといった,トホホもいいところな話だったわけですけれど,最高検の対応は思ったよりも早かったと思っています。多分,その点は救いだったんだと思う。

客観証拠の客観性を担保するという話は,講学上よく話題に上る話だけれども,「実際はちゃんとやってる」的な話があったがために,制度的な担保についての話はあまりされていなかったんじゃないかと思います。ここら辺は,各証拠物の性質によって,客観性を担保する内容が変わってくるので,ひとくくりに議論できないんじゃないかと思う。例えば,DNA 鑑定のような科学鑑定では,後の優れた鑑定でも使えるようにサンプルを多くとって,他の DNA と混じらないように保管するとかいった具合。

一方,今回の電子データの場合,ファイルの更新日時が変更されたといっても,単にファイルを保存しなおした記録で,ちょっといじるだけで簡単に変わってしまう情報だったりします。フロッピーの保存状況の立証を抜きにして,この日付だけから共謀の日時を推認するには,合理的な疑いを超えるほどの事実を推認することはできないんじゃないだろうか。もっとも,この日付が改ざんされないまま法廷に提出されていたならば,被告人の無罪は確定的だったために「無罪証拠を消した」という意味で問題なんでしょう,多分。

でですね,巷ではこの話に便乗して取調べ過程の可視化とかいった話が持ち出されているわけだけれども,どうもスジとして違うんでねいか,と。だって,当該証拠は物証であって供述証拠じゃないから。取調べを可視化したって,その範疇にない証拠の内容を改ざんされたらおしまいでしょう。また,今回の証拠はどちらかというと無罪証拠なわけで,検察としては出したくない類の証拠だったりします。検察が仮にフロッピーディスクを押さえていたとしても,自己に不利な証拠を法廷に出さなかったら,どちみち意味がなくなってしまいます。取調べの可視化なんてやったって,同じリスクは残ったままです(別の側面からやるなとは言わないけれど)。

こゆことが起きないことを(一部)担保する制度として提唱されているのは,取調べの可視化よりもむしろ証拠の全面開示制度です。

証拠開示制度というのは,検察側が持っている証拠の全部または一部を法廷に強制的に提出させる制度です。捜査機関と被告人とでは,もともと証拠の収集能力に大きな格差があるので,検察の有利不利を問わず,集めた証拠をすべて開示しなさいという狙いです。現行の刑事訴訟法に規定はなくて,学説上主張されているだけの話。運用上は,公判前の準備手続や裁判所の訴訟指揮権の一部として実現されています(ほとんどのケースでは全面開示されているとも聞いているが)。

ま,これにしたって,改ざんされちゃったらどうしようもないので,証拠法則自体を工夫しないと制度的な担保にはならないんでしょうけどね。改ざんされやすい証拠については何かしらの補助証拠と一緒に立証することを義務付けるとかいった具合(普通やってるだろうが)。よく分からんけれども。

電磁的証拠の証明力なんてそんなもんです。偉い人は……(以下略)的なところ。

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