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「革命には夢を」――または kobo の夢の話

2012年08月01日

弁解なんだかよく分からない三木谷社長の話が続いているんだけれども,読書革命を標榜している kobo の話をもう少し。開発の拙さや,ユーザを舐めてる言動については,この人はこういう人なんだと思ってるので,個人的には割とどうでもよかったりします。しかし,それにしても楽天が売る kobo は買う気がしない。ま,あたしゃ普段 Kindle3 を使ってるので,正確に言うと「乗り換える気がしない」なんだけれども。

三木谷氏の話を聞く限り,この人にはそもそも読書体験が乏しいのではないかと思うところがある。そして,もう少し敷衍すると,こうした「読書知らずが本を売る」傾向は,少なからずこの国に蔓延している気すらします。これはあくまでも,業界人ではなく一人の本読みから見た印象だけれども。

何をもって三木谷氏にそうした側面を感じるのかというと,それは端的に彼が「金の話ばかりしている」点にある。この人の kobo に対する動機は,「読書のすばらしさをさらにすばらしくする」のような読書あるいは読書人に向けた理想ではなく,端的に「これまで出版業界が握っていた金づるを手元に引き寄せたい」といった理想に支えられているのだと思う。企業人としては,結果として後者のようになることはあっても,それが目的になってしまってはいけない。そうでなければ,せっかく魅力的なテクノロジーの良さは伝えられないから。呆れてしまったのは,漫画『神の雫』を読んで楽天でワインを買うとかいったくだり。わざとらしさを通り越して,トホホしか浮かびませんでした。

革命にはある種お祭り的な夢が必要なわけだけれども,彼にはそれを語れるだけの体験が乏しい。少なくとも,読書好きを惹きつけるだけの夢を語りきれていない。

もうひとつ。ぶっちゃけた話,世間的にベストセラーと呼ばれる本は,古本屋で kobo のそれより圧倒的に安く買えるし,文庫本になっていれば持ち運びに困ることもない。紙媒体は電気を使わないから,明かりさえあればどこでも読める。保管場所に困るほど本を読む人でもない限り,電子媒体の本を読むメリットはほとんどありません。

一方,電子媒体を選ぶメリットは,在庫の少ない本や取り寄せに時間がかかる本を簡単かつ安価に入手できる点がある。あたしは Kindle を使っているけれども,最近買った『The C++ Standard Library』[Kindle Edition]は,洋書にもかかわらず一瞬で届いたし,日本の Amazon で買うと6000円以上する本が,電子媒体だと26.39ドル(現時点で約2000円)でした。この手の本は文庫本にもしづらいので,持ち運びも楽になりました。

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つまり,電子媒体のうまみを享受できる(と思える)人は,希少本や重い本,あるいは大量の本を日常的に読んでいる人なわけで,人並みに本を読んでいる人にとって「夢」と言えるほどのメリットはないのだと思う。元を取れない。そうした現状に対して,kobo はどのような夢を見せてくれるのか。

この点,傍から見る限り,kobo の販売戦略は,単純にこれまであったパイの奪い合いに参加しているだけにしか見えない。新しいデバイスでもって,読書の新しい価値を創造/提案しようとする姿勢が見えない。少なくとも伝わってこない。

一言で言ってしまえば,「製品のコンセプトが分からない」「はやりモノに(後発として)乗っかっただけ」とゆことになるのだと思う。「新しいから」といった理由だけで飛びつくほど,日本の消費者は馬鹿ではなくなっている。そのデバイスでどんな夢を見せてくれるのか。突き詰めて言うと,ユーザはそれを心待ちにしているのだと思います。とかとか。

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