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40歳定年制の話とか

2012年08月04日

こちらの話から。個人的に議論自体は分からんでもないんだけれども,ドン勝ちしたときの民主党の基本路線からして野田首相のやってることは本当に分からない。

政府の国家戦略会議(議長・野田佳彦首相)フロンティア分科会が、7月6日にまとめた報告書で「40歳定年制」をぶち上げた。65歳への定年延長も議論される中で、突然浮上した40歳への大幅な短縮だけに、経済界でも賛否が分かれる。雇用の流動化で労働生産性を高め、国家の衰退を防ぐ狙いというが、転職を支援する制度面の整備が進まなければ、安易なリストラの助長に終わる懸念もある。

突然浮上した「40歳定年」に賛否両論 安易なリストラ助長も+(1/3ページ) - MSN産経ニュース

あたしのいる業界は,とっくの昔に雇用が流動化しているので,若手からするとあまり影響はないと思うんだけれども,それでも労組が強い大手ベンダは影響が大きいんじゃないかと思う。最近の若い子は安定志向だというけれど,雇用が流動化しない限り若手にチャンスは絶対に回ってこない。

もっとも,これまで雇用の流動化を旗印にしていた政策は,結局老人の既得権益を守りつつ,若者ばかりが労働市場で辛酸を舐めることになっていた。詳しく制度を見てみないと分からないけれども,今度はそゆことのないようにしてもらいたい。どうせ無理だろうけど。

一方,労働市場を本当の意味で流動化すると,企業側に選択の自由が増すわけで,それがこの会議の本旨だと思うのだけれども,その一方で労働者側もそれを念頭において行動するようになる。しかし,現在の企業側にその市場に適応する体力があるのか微妙なところがあると思っていたりもする。今は買い手市場だから,市場の流動化は企業側に有利に倒れるけれども,売り手市場になったときに企業側が負担するコストについて,彼らはどれほど念頭においているのだろうか。つまり,切りたい人は切りやすくなるけれども,反面,欲しい人を残しておくために過分なコストを負担するようになる可能性もある。

まず,座長の柳川氏は40を過ぎた労働者が大学に帰ってくることを念頭に置いているようだけれども,大学なんて暇人の遊び場なので,生活がかかっている40以上の人間が大学で学ぶ価値はまったくない。特にソフトウェア関係は,プライドばかり高い無能を育てるばかりで,現場で育てているのが実情だったりする(ちゃんと開発できる人は自力で頑張っている)。したがって,座長の「大学に戻ってこい」話はおめでたすぎる妄想だと思っていい。

もうひとつ。実のところ,終身雇用なり定年制なりは,低コストで能力のある幹部や熟練技術者を雇うのに一役買っていたところがある。実際,うちの業界の話だけれども,新卒からその会社にいた人と中途で採用される人とでは,同じ年齢・経験年数・実績でも,後者のほうが一般的に年収が高い。どうしてかというと,中途採用市場は元から自由な市場なので,人材を獲得するに当たっては各企業間で競争する必要があるからです。この点,40歳定年の場合は程度が緩やかになるだろうから,極端な話として1年契約を考えると,1年後の賃金は他の企業との競争で決まることになる。終身雇用のカードがない以上,手札は他の企業と同じです。もちろん,その競争には外資も入る。こうした市場で,現在の日本企業は生き残っていけるのか。そもそも,終身雇用制度は,定期昇給制度や退職金制度と同じく,熟練工の足止め作として設けられた経緯があったりする。それを自ら放棄することの意味をよく考えた方がいいと思う。

技術界隈で40歳を定年とした場合,せっかく稼げるようになるまで育てた人材も,さらにコストをかけなければ他に取られることになる。場合によっては,カッコウよろしく新卒は採用せず他に育てさせて,40過ぎや40をまもなく迎える優秀な中途ばかりを採用した方が,コスト的に安く上がるかもしれない。

雇用の真の意味での流動化は,既得権益を守るためだけに提唱された形式的な能力主義を破壊し,「能力」なる概念は労働市場上の評価として実質的に機能する可能性がある。企業人は提唱するのも賛同するのも勝手だけれど,よほど腹を括ってやらないと痛い目をみるよ,とか言っておきたい。ま,どうせできないんだろうけど。

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